僕にとってうれしかったのは、
僕のゴールがイタリア人を
幸せにしているんだと思えることだった
決勝トーナメント1回戦のナイジェリア戦で、イタリアは大苦戦した。
君は同点ゴールを決め、さらに延長戦でPKを決めてイタリアを救った。
イタリアの救世主となった心境はどうだった?
R ―― どんな心境だったかだって? サッカーとはそんなもんだよ。頂上とどん底をくり返すのがサッカーなんだ。あの日、イタリアは最低のゲームをした。80分間はひどいプレーだった。残りの10分間で何とか勝ったという感じだよ。良いプレーができない事情はあったけどね。想像を超える暑さ、110%の湿気、今思い出すだけでゾッとするよ。
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準決勝のナイジェリア戦では、
バッジョの2得点がイタリアを救った |
それに、ヨーロッパでのTV中継のために、ゲームは真っ昼間に行われた。
R ―― そのとおりだよ。そのうえ“旅”がある。なにせ、ゲームの行われる町と町の距離がすごいんだ。それに、練習に次ぐ練習。夜すぐ寝つかないと疲労が蓄積されてしまう。ストレスも感じていたよ。毎日、報道陣の取材に応じなきゃならないし、常に、背後に視線を感じるような生活だった。気を抜く瞬間がなかったんだ。常にファンや記者やTVカメラに追われていたからね。
まさしく“死の行軍”だね。
R ―― 楽な戦いではなかったさ。大きなプレッシャーを感じていたしね。練習でも100%を要求されていたし、ピッチを離れても、監督と話す時、人々(ファン、報道陣)と話す時も100%だった。緊張感は極度に達していたと思うな。それに、合宿生活は、僕の記憶に間違いがなければ、2カ月半に及んでいた。信じられないくらい長かったよ。しかも1カ月のバカンスで十分に休養をとったうえで合宿に参加しているというわけじゃないんだ。リーグ戦、コッパイタリア、ヨーロッパカップ、そして、W杯地区予選と、ぎっしり詰まった1シーズンを終えて、そのまま合宿がスタートしたんだ。クタクタな状態で合宿に入り、そして、別の大陸に移動する。そこには日陰でも40度という暑さが待っていたんだよ。加えて周囲からのプレッシャーもある。全員にとってきつい大会だった。特に僕らイタリアにとってはきつい状況が続いた。例えば、ナイジェリアとの120分間のゲームの3日後、遠く離れた町に移動して、さらに高い気温の下でスペインと対戦したんだ。他のチームに比べて休養時間が少ないうえに、決勝まですべてが厳しいゲームだった。挙げ句、最後は“大陸横断”だよ。6時間のフライトでロサンゼルスまで行ったんだ。新たな時差だって生じていた……その2日後が決勝だったんだよ。
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| コンディション不良からか、予選リーグのバッジョは本来の出来からほど遠かった |
きついスケジュールの中でも、君はゴールを決め、スペインを退けた。そして、準決勝のブルガリア戦では君の2ゴールで勝利をものにした。まさにバッジョの爆発といったところだけど、体調は良かったの?
R ―― 良かったわけがないよ。正直言って体調は最悪だった。やりたいと思ったプレーはできなかったさ。確かに、僕のゴールでゲームを決めることができた。それはわかっている。だけど、自分の持っているものすべてを出し切るというわけにはいかなかった。それには理由があったんだ。マークがきつかったこと。(イタリアが)戦術にこだわりすぎたこと。そしてオフサイドトラップ……全チームがゾーンでプレーしてきた。囲い込みとかプレッシングがきつかったんだ。そんな様々な理由で自分自身の本領を発揮するというところまではいかなかった。
ノルウェー戦でサッキに示した怒りが、いい意味で君の刺激になったのでは?
R ―― いや、そんなことは関係ないよ。W杯でプレーするということは、いわば夢の実現なんだよ。道路でボール遊びに興ずる世界中の子供たちが共通の夢を持っていると思うんだ。W杯でプレーするという夢をね。僕は幸運にして、これまでにすでに3回もW杯を経験した。そして、できれば4回目を経験したいと願っている。W杯に出ているということだけで、十分にやる気が出てくるものなんだ。どんな障害があったとしても、どんな壁にぶつかったとしても、やる気が損なわれるなんてことは考えられないんだよ。だから、サッキとの衝突が新たな刺激をもたらしたなんてことはない。僕にはそれ以前に、93年のUEFAカップ優勝、バロン・ドール、FIFA最優秀選手であることを証明するという強い意識もあったしね。
すべてのイタリア人が君を支持していた。
君がW杯のヒーローになるよう願っていた。
それが、君の勇気になっていたということは?
R ―― もちろん、勇気づけられたよ。それに、とてもうれしかった。僕にとってうれしかったのは、僕のゴールがイタリア人を幸せにしているんだと思えることだった。すべての努力や苦労が報われるような気持ちになれたんだ。
それは最高だね。
R ―― そうさ、最高だよ。
君はイタリア国民に喜びを与えたのだから。
R ―― すごいことだと思うよ。僕のゴールが、そしてチームの勝利が、国民に幸福感をプレゼントしていたんだから。そう感じられることは最高だったよ。そう、最高の気分だった。
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| 決勝トーナメントに入ってからのバッジョは、決勝のブラジル戦を除くすべての試合でゴールを決め、イタリア国民に喜びを与えた |
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