回 〜 現在、そして未来へ 〜 (1/4)
リッピとの確執により、インテルを去ることになったバッジョが
再出発の場として選んだのは、ブレッシャだった。
自分を冷遇した人々を見返すように、バッジョは見事な活躍で
ブレッシャを34年ぶりのセリエA残留へと導く。
そして今、その視線の先には2002年W杯がある。

インタビュー●高橋在 interview by Ari TAKAHASHI
写真●赤木真二、兼子愼一郎、高橋在、グエリン・スポルティーヴォ
photo by Shinji AKAGI/Shin-ichiro KANEKO/Ari TAKAHASHI/GUERIN SPORTIVO

リッピとの1年間は
本当に悲劇的だった。彼の下では
すべてが無駄だったんだ


君にとって3度目のW杯であったフランスW杯が終わって、新しいシーズン(98−99シーズン)がまた始まった。 たまたまなんだが、あの頃、君の弟のエディーとアンコーナの町で話す機会があったんだ。エディーは、「バッジョ家は代々インテリスタなんだ。 ロビーがやっとインテルでプレーすることになって、家族みんなで喜んでいる」と言っていたよ。 君の愛するインテルでの2シーズンを振り返ってくれるかい?

ロベルト・バッジョ(以下R) ―― 貴重な2シーズンだったと思う。チャンピオンズリーグでも戦ったし、スクデット争いも演じた。特に1年目はいい戦いができたと思っている。UEFAカップでも優勝したし、リーグ戦でも2位になったからね。刺激的なシーズンを送ることができたし、いい思い出もたくさんあるよ。でも、監督がシモーニからリッピに代わってチーム内に大きな問題が生じたんだ。シモーニと選手の関係はすごく良かったから、監督の期待に応えられなくてすまないという気持ちだったよ。彼がチームを去ると同時に、チーム内に大きな亀裂が生じてしまったんだ。

インテルに入ったことを後悔したことは一度もないの?

R ―― 物事が起こった後では何とでも言えるし、どんなことでも考えられるさ。問題は、自分の進路を決定する時点で先を読めるかどうかということなんだ。僕がインテル行きを決断した時点では、「インテルはもっといいチームになる」と思っていた。ただ現実は違っていたということさ。

インテルでの最後の試合となった、チャンピオンズリーグ出場権を賭けたプレーオフ(vsパルマ)で君は見事なゴールを決めた。あの2ゴールは誰に捧げたのかな? モラッティ会長? インテリスタ? それとも監督……?

R ―― あのゴールはモラッティ会長に捧げたつもりだよ。いや、モラッティ会長と自分自身かもしれない。いずれにしても、リッピとの1年間は本当に悲劇的だった。僕自身、いろいろ試みたよ。だが、彼の下ではすべてが無駄だったんだ。

だから、皮肉を込めて、彼に(リッピ)に捧げたのかと聞いたんだよ。

R ―― 精神的暴力に耐えながら、僕は自分のプロ意識を立証したと思っている。今でも言いたいことはあるよ。だが、言うべき時期ではないと思っているから、口には出さないようにしているんだ。とにかく、最後の最後にゴールを決めることができた。このことに関しては自分自身、誇りに思っている。辛い仕打ちに遭いながらも、最後に自分の足跡をインテルに残すことができたんだ。リッピはあらゆる妨害を企ててきた。だが僕は障害を乗り越えたんだ。

インテリスタの窮愛を一身に受けたバッジョだったが、リッピとの確執によりインテルを後にした


自分自身がゴールを決めることが
チームにとっても大事だということに
気がついたのさ

そして君は様々な選択肢の中から、再出発の場としてブレッシャを選んだ。シーズンを振り返ってみると、序盤は苦しい戦いの連続だったよね。君自身も、最初のゴールを決めるまでずいぶんと時間がかかった。なぜ、ゴールを決められなかったんだろう? 新しい環境に戸惑ったのかな?

R ―― 確かにチームはいいスタートダッシュが切れなかった。序盤戦は強敵ばかりとぶつかったこともある。それに、僕自身、まだチームに馴染んでいなかったしね。

最初の7試合の相手は、ウディネーゼ、パルマ、フィオレンティーナ、ラツィオ、ローマ、アタランタとのロンバルディア・ダービー、ユーヴェという具合だった。

R ―― あれだけ強敵相手のゲームが続くと、勝ち点を積み重ねるのは難しいよ。この時点で早くも“安全圏”を手に入れるための戦いが始まったんだ。楽ではなかったよ。チームはいいゲームをしていたけれど、勝てなかった。これは悲劇的なことさ。本来ならもっといい順位がふさわしい戦いをしていたのに、対戦相手に恵まれないことで下位を低迷するというのは本当にキツいことだよ。

君は20節目にして初めてゴールを決めた。あれはフィオレンティーナ戦だったね。ケガで7試合休んだ後での復活ゴールだった。

R ―― 僕はいつもチームの役に立とうと思っていたんだ。自分個人のことは全く考えていなかった。だから、ゴールにはこだわっていなかったよ。チームがもっと上位にいくこと、チームが勝つこと、ただそれだけを考えていた。でも、“チームのためにプレーする”ということにも限度があるということに気がついたんだ。アシストだけじゃなく、自分自身がゴールを決めることがチームにとっても大事だということに気がついたのさ。だから自分でも積極的にゴールを狙うことにしたんだ。

ゴールを挙げられなかったのは、体調のせいではなく、君自身の選択の結果であったということだね。

R ―― 体調はシーズンを通してずっと良かったよ。君も知っているとおり、昨夏、僕は初めて2カ月もの間、1人でトレーニングしたんだ。おかげで、夏のキャンプや合宿におけるストレスを感じることなく練習できたと思っている。それに、毎日、午前と午後に練習をしていたけど、練習後は家族と一緒に生活できたんだ。それが精神的にすごくプラスに作用したと思っている。だからこそ、1シーズンを通じてベストコンディションを保てたのかもしれないな。といっても、残念ながら、レッチェ戦でケガをしてしまったけどね。フリーキックを蹴った時、足にナイフが突き刺さったような感じがしたんだ。2カ月間、戦列から離れてしまったことについては、とても残念に思っているよ。

ケガで休んでいる時にこそ、君自身のチームでの役割を感じたんじゃない?

R ―― そうとも言えるな。僕が戦列を離れている間、チームは最下位争いを演じるほど順位を下げてしまっていた。だから、僕自身、肉体的にも精神的にも完璧な準備を整えておく必要があったんだ。僕は必死に身体を作り直したよ。そして幸運なことに、僕がいない2カ月間で、チームは成長を遂げた。コンディション的にも精神的にもたくましく成長したんだ。それが好成績に結びついた最大の理由だよ。


1 / 4