今のクラブ運営に必要なのは  
選手全員の年俸の総額に
上限を設けることだ
 


クラブ経営上、この5年間で、いったい何が起こったのでしょうか?一時は各クラブが一般企業の理論にならって経営を行うという方向にあると見えたのですが、実際は、倒産を防ぐために決算に手を加えるクラブすら出てきている。これは、なぜなんでしょう?

G ―― 結局、選手年俸の高騰を防げなかったということだよ。イタリアだけではない。世界中どこに行ったって同じことだよ。年俸が高すぎるんだ。その背景にあるのはTVだろうな。つまり、巨額の放映権が手に入るから、選手獲得に大金をつぎ込めるようになって、その結果、移籍金や年俸は、まさに天文学的数値になったんだ。人件費の高騰が、やがて自分たちの首を絞めることになるだろうと想像はしていた。だが、立ち止まることができないんだよ。ファンはスタープレーヤーの獲得を望み、我々はファンの期待に応えなくてはならない。スタープレーヤーは高額を望む。言うなれば、インフレスパイラルだよ。昨シーズン、ミランの赤字は800億リラ(約47億円)だった。

ローマの会長、センシと談笑するガッリアーニ。ミランもローマも選手の年俸総額には莫大な費用を投じている
赤字の補てんはどうしたんですか?

G ―― ベルルスコーニにお願いしたよ。うちはまだいいほうさ。インテルのモラッティ会長なんて、少なく見積っても、その2倍の額をポケットマネーからひねり出さなければならなかったはずだ。株式市場に上場しているクラブ、例えば、ラツィオ、ローマにはオーナーのポケットマネーなんて発想はあり得ないだろうがね。選手の年俸総額に2000億リラ(約116億円)近くの金額を費やしているチームはセリエAに5、6チームはあるだろうな。これは、驚くべきことだよ。選手の年俸は2年前の2倍に跳ね上がっているんだから。

そして、その反面、クラブの収入は増えていない……。

G ―― いや、増えていないどころか、今後大きく減少する可能性が高い。TV放映権が今の半分になると考えたほうがいいからね。地上波は広告収入の減少を嘆いているし、有料TVは、200万以上の人が電波をジャックして無料で視聴しているという状況で、どうしようもない状態なんだ。ミランの場合は、収入の60%がTV放映権、27%がスポンサー、13%がチケット収入という割合だ。TVからの収入が半分になり、スポンサーも不況にあえいでいる……となると必然的にクラブ経営に赤信号が灯る。それなのに、移籍金、年俸は上がる一方というのはどう考えてもおかしな話だろう?

治療法を見つけるのは難しそうですね?

G ―― いや、結構、簡単なものだよ。問題は、真剣にそれを望むかどうかだ。各クラブの会長に、「債務を禁ずる」という通達を出せばいいんだ。要するに収支バランスで赤字が出ないように徹底させる。それでも、金を使ってチームを強化したいというチームだけが、赤字分を会長のポケットマネーで補てんすればいい。要するに、シーズン開始前と終了後のバランスがプラスマイナスゼロになるような形で、クラブ運営をすればいいだけの話なんだ。その次にやるべきことは、サラリーキャップ制(注:選手の年俸に上限を設けること)の導入だろうな。

それは少々無理な感じがしますが……。

G ―― いや、私の言うサラリーキャップ制は選手個々の年俸に上限を設けるという意味ではないんだ。選手全員の年俸の総額に上限を設けるという考え方なんだよ。中には100億リラの年俸の選手がいても構わない。選手全員の年俸の総額に上限を定め、年俸の総額が利益の80%を越えてはいけないことにすればいいんだよ。つまり、100リラの利益に対して支払う額が最大で80リラと決めてしまえばいい。例えば、NBAでは支払いは利益の55%までと定められている。さっきも言ったように、それでもチームを強化したい場合はクラブの金庫からではなく、オーナーのポケットマネーから引き出せばいいんだよ。その他に、クラブがやるべきことは、登録選手の数を減らすことだろうな。今は、チームの登録選手が多すぎる。それでも、プリマヴェーラの選手を使うのなら話は別だが、今のままでは無駄金を使っていると言われても仕方ないだろう。

お言葉を返すようですが、「サッカーを楽しいものにするためには、厚い選手層が必要だ」と言って、最初に選手を買い集めたのはベルルスコーニでしたよね?

選手層を厚くするために選手を買い集め、スクデットも手にしたミラン会長、ベルルスコーニ
G ―― 確かに我々ミランがサッカーを変えようとしたのは事実だ。だが、他のチームが我々の真似をして我々を追い抜いていった。ヨーロッパ中がベルルスコーニのやり方を模倣したんだよ。そうなれば、当然、選手の取り合いになる。誰かが、スパートしようとすると、離されないようについて行くしかないんだから。だが、過去のことは過去のことだ。今の経営状況を考えれば、無意味な過当競争は避けるべきだと思わないか?我々経営者が団結して臨む姿勢も必要なんだよ。選手側は団結している。彼らは互いに年俸に関する情報を分け合っているんだ。

どんなふうにですか?

G ―― 例えば、うちの選手が代表のゲームから戻ってくると、急に年俸の話を切り出したりする。「誰々がこれだけもらっているのだから、俺だってこのくらいは欲しい」とかね。私は、「契約は守ろうではないか」の一言で済ませるが、果たして、それで満足しているのかどうか……。私自身は、何らかの不満を抱いている選手をチームに引き止めようとは思わない。チームメイトに悪影響を及ぼすからね。ただ、年俸アップを要求する選手全員を放出するわけにはいかないとも思う。それが問題なんだよ。いや、正確には、問題だった、と言うべきだろうな。今なら、その気になればできると思っているからね。ただ、我々にはもう1つ大きな問題がある。ファンだよ。我々は、ファンに“恐喝”されているようなものだ。ミランの公式サポーターは約650万人だが、彼らすべてがミランに“常勝”を期待している。「負けることもある」ということをわかってもらえないんだ。
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