アドリアーノ・ガッリアーニは現在57歳。一昨年、“おじいちゃん”と呼ばれることになった。1人娘のニコルが男の子、アドリアンを産んだのだ。孫を見つめるガッリアーニには、スタンドで見せる険しい表情はない。ニコルはアメリカのコロンビア大学を卒業し、アメリカで結婚した。
ある意味ではアドリアンがニコルの命を救ったと言えるのかもしれない。ニコルはメリルリンチ社に就職するはずだった。そう、あのツインタワーに本社を構えていた金融総合会社のメリルリンチである。だが、子供を授かった彼女は、出産のために仕事を諦めイタリアに帰国した。彼女と一緒にメリルリンチ社に応募し、無事入社までこぎつけた男性は、9月11日の同時多発テロに巻き込まれたと言う。命は取り留めたものの大きなケガを負ったそうだ。
ガッリアーニはサッカーに魅せられた男である。だが、「今のサッカーは好きになれない」と言う。「3、4人の狂暴な男たちが1つのボールを巡ってもみ合う光景は見ておれんよ。あれじゃ、ただ相手の体を蹴り合っているだけじゃないか。そのくせ、ゴールマウスにはシュートが飛ばないとくる。各チームが、いや、個人がそれぞれ勝手にやっているという感じだ。まるで、共通のルールなんて存在しないみたいだ。例えば、イタリア国内では背後からのチャージは厳しくチェックされている。ところが外国でプレーするとそうはいかんのだよ。背後から蹴りを入れられても笛が吹かれないこともある。イスタンブールでローマがプレーした時なんてひどいものだった。何でもありだったんだよ。世界共通のルールは存在しているのかね?オフサイドにしても同じことが言えると思わないか?レフェリーによって基準が違うんだ。オフサイドポジションにいる選手がプレーに関与しているのか、いないのか、それとも半々なのか……。結局、それぞれのレフェリーが勝手な解釈で笛を吹いているという印象を受けざるを得ない。世界中どこに行ってもできる限り共通な判断基準があるべきだと思っている。レフェリーの主観で判定が下されるのには我慢できない。もちろん、レフェリーがミスをするのは仕方がないと思う。人間である以上、ミスを犯すのは当然だからね。問題は、正当なジャッジなのかミスジャッジなのか、基準自体が曖昧だということだよ」。 |