当時のサッカーと
今のサッカーとの比較は
現実的ではないよ

 

トラパットーニが、あなたの快挙を再現することができると思いますか?

ベアルゾット(以下B) ―― アッズーリのファンとして、さらにトラップの友人として、そうあることを願っているよ。 トラパットーニは、言うまでもなく、イタリア・サッカーの伝統を築き上げたネレオ・ロッコの流れを引き継いでいる監督だ。 ロッコから私に、私からアゼリオ・ヴィチーニに、そしてチェーザレ・マルディーニに(チェーザレは82年スペインW杯でベアルゾットのアシスタントコーチを務めた)、さらにはディノ・ゾフに引き継がれたイタリア・サッカーの伝統を守ってくれる監督だと思っている。 だからこそ、トラップにはぜひともW杯制覇を成し遂げてもらいたい。 トラップはイタリアのようなサッカー大国の代表監督を務めるには適任だよ。 私が見る限り、2002年のW杯でイタリア以上の力を持つチームは存在しない。 だから、アッズーリこそ、W杯を制すチームだと信じている。 

アルゼンチン、フランス、ブラジルなどが優勝候補に挙げられていますが?

B ―― みんな強いチームだ。 伝統国でもあるしね。 私は「イタリアは、テクニック面でも戦術面でも、勝てるだけの戦力を持っている」と言っているだけで、「勝った」と言っているのではない。 優勝するためには、ライバルと見なされるチームを全部倒していかなければならないんだ。 それに、サッカーというのは予期せぬ出来事でどうにでも転がってしまうスポーツだということを忘れてはならない。 一つのイレギュラーバウンドが勝敗の行方を決めてしまうこともあれば、ちょっとしたケガが大きな戦力ダウンを招くこともある。 勝ち負けには様々な要素が絡むものなのだ。 ライバルの中から、あえて最大の敵を挙げるとすれば、それはアルゼンチンだろう。 バティストゥータは調子を落としているようだが、彼ほどの選手がW杯のような大舞台でおとなしくしているとは思えない。 クレスポを推す者も多いが、まだ、クレスポはバティストゥータの域には追いついていない。 

バティストゥータはヴィエリと対比できる選手、つまりセンターフォワードとして一人でもゴールを生み出すことのできるタイプのプレーヤーだと思うんです。 
でも、あなたが指揮したアッズーリにはこのようなタイプのストライカーはいなかったですよね?


B ―― そうだね。 ポストもできるセンターフォワードはいなかった。 確かに、パオロ・ロッシは偉大なストライカーだった。 だが、タイプは違った。 ロッシはスピードを活かしてゴールを“掠め取る”タイプのFWだったからね。 ピッポ・インザーギとかモンテッラのようなFWだったとでも言うべきなのかな。 あえてヴィエリ・タイプのFWを探せと言われれば、グラツィアーニの名前を挙げるしかない。 アルトベッリは身長はあったが、ヘディングは物足りなかった。 空中戦で一番強かったのはロベルト・ベッテガだよ。 だが、彼は82年のW杯にはケガで出られなかった。 ただ、私自身は、コヴェルチャーノの監督コースでいつもこう言っているんだ。 「当時のサッカーと今のサッカーとの比較は現実的ではない」とね。 サッカーは日々進化しているんだよ。 変化に対応するだけの柔軟性を持つことが大事なんだ。 

20年前のサッカーと比べ、相当変化していますか?

B ―― サッカーの本質は変わっていないし、今後も変わらないと思う。 新たな発見なんてものもないと思うよ。 例えば、多くの人が「アリーゴ・サッキは革命を起こした」と言っているけれども、あれは革命でも新発見でもないんだ。 彼が創造したと言っている“ゾーン”にしても“プレッシング”にしても、以前からあったものなんだよ。 決して、サッキが発見したものではない。 サッカーは団体スポーツであって、その基本は、チームに何らかのシステムを導入することと、個々の力をいかにチームに反映させるかというバランスにあるんだ。 私の時代のサッカーと今のサッカーの最大の相違点は個人技に対する意識の度合いだと思う。 私の時代には、個々の特性、個々の自由な発想が重要視されていた。 一方、今のサッカーでは、監督の戦術主義が横行している。 

最近のイタリアサッカーは、スペインやイングランドのサッカーに比べ、スペクタクル性に欠けていると批判されていますが、この点に関しては?

B ―― 確かにヨーロッパのカップ戦ではスペインとイングランドが結果を出している。 ということは彼らが良いサッカーをしているということになる。 また、ドイツだってクラブレベルではかなりの好結果を残している。 私には、これらの国がイタリアとそれほど違うサッカーをしているとは思えないんだ。 問題は、クラブチームの成績が、直接、代表チームの成績に反映されるかどうかという点にある。 今や、クラブチームの監督をすることと、代表チームの監督をすることは根本的に違うんだよ。 EURO2000の土壇場で優勝を逃したゾフのアッズーリがやったサッカーが、イタリアの伝統に基づいたものだとは思えない。 それに、W杯とEURO2000を勝ち獲ったフランスのリーグが高いレベルにあるとは言えない。 かつてはリーグ戦のレベルが代表チームに反映されると言われていたけれども、今は、そういう理論は通用しないんだよ。 
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