アンドレイ、あの瞬間、君は何を考えていたんだい?

シェフチェンコ(以下S) ――
何も考えていなかったよ。ただ、レフェリーが笛を吹くのを待っていたんだ。なかなか笛を吹いてくれなかったから、どうしたのかと気になったね。もう少し時間がかかっていたら、どうなっていたかわからなかったよ。外していたかもしれない。

シュートが決まった瞬間の気持ちは?

S ―― 最高の気分だったよ。僕のサッカー人生で最大の喜びさ。いつも何か大きなタイトルが欲しいと思ってた。できれば、僕の決勝ゴールでビッグタイトルを手にしたいと思ってたんだ。その願いが、僕の想像をはるかに超えた形で実現するなんて……。チャンピオンズリーグ決勝の舞台、しかもユヴェントス相手に、PK戦の最後のキッカーとしてゴールを決められるなんて、本当に信じられないよ。僕のシュートが決まった瞬間に、チャンピオンズリーグのタイトルが手に入ったんだ。これ以上のことを望めと言ったって無理な話だろう!? 僕のPKがミラニスタの記憶に永遠に刻み込まれたんだ。最高の気分だよ。

ミラニスタの記憶だけじゃなく、カルチョの歴史にも“シェフチェンコ”の名が刻まれたわけだ。

S ―― そうだね。とにかく、他の誰よりも僕自身が今回の優勝を喜んでいると思うよ。ミラン4年目となった今シーズンは、決勝の1カ月前の時点では、最低のシーズンに終わる可能性が高かった。カンピオナートでは思ったようなプレーができなかったし、チャンピオンズリーグでもこんな素晴らしい結果を残せるなんて誰も想像してなかったからね。でも、僕らは快挙を成し遂げた。カンピオナートのリベンジをチャンピオンズリーグで果たすことができたんだ。
ミランがリベンジに成功した“秘密”は何だろう?

S ―― 秘密なんてないよ。ミランが強いチームだった、ただそれだけさ。ミランが強いチームだということを僕ら自身も意識していた。場合によっては、その意識がマイナスに働く場合もある。コスタクルタはこう言ってたよ。「ミランは強すぎる。強すぎるからこそ、格下のチームに勝てないんだ」とね。実際、カンピオナートでは、格下と見なされているようなチーム相手の取りこぼしが多すぎた。ブレッシャ、エンポリ、ピアチェンツァ、アタランタ……他にもあったな。ペルージャやレッジーナにも不覚を取った。本当に理解に苦しむシーズンだったよ。いつもは楽に勝てる相手なのに……。

確かに、君の言うとおりだね。
上位チーム同士の直接対決の数字だけを見れば、ミランはトップだった。
ユーヴェ以上の勝ち点を挙げているんだ。


S ―― そうなんだ。直接対決だけを見ると、シーズン前半、ユーヴェに負けた以外は全部勝っているんだからね。そのユーヴェに対してもサン・シーロでは借りを返したし、おまけに、マンチェスターでも勝たせてもらった。インテルとのミラノ・ダービーは2試合とも制したし、チャンピオンズリーグの準決勝でも僕らが勝ち上がった。とにかく、僕らは上位との直接対決では圧倒的に強かったんだ。

ただ、インテルとの準決勝は2試合とも引き分けだったよね。
「ミランはチャンピオンズリーグを制したけれど、準決勝(2試合)、決勝の3試合で1勝もすることができなかった」という批判の声も上がっているけど……。


S ―― カップ戦では負けなければ次につながるんだ。ルールがそうなっているんだよ。大会規定だって、何も今シーズンからそうなったわけじゃない。「アウェーゴールは2倍としてカウントされる」というルールだって、ヨーロッパカップが始まって以来、ずっと変わってないんだ。つまり、インテルとの準決勝では、僕らがアウェーゴール・ルールを最大限に利用したということさ。もっとも、第1戦がアウェーだったとしても、結果は変わらなかったと思うよ。もし、そうだったなら、僕らはマンチェスター行きを決定づけるゴールを初戦で決めていただろうからね。

そうそう、ミランの決勝行きを決定づけたゴールはシェフチェンコが決めたものだった。それを忘れちゃいけないね。

S ―― そう言ってくれてありがとう(笑)。特別なシーズンとなった02−03シーズンの中でも、あのゴールは特別な思い出だよ。僕にとって今シーズンは、ある意味、とても特別なシーズンだった。シーズンを通じてたった10ゴールだよ。こんなに点を取れなかったシーズンは記憶にないな。これまでは、シーズン前半戦だけで10ゴールを挙げるのが当たり前だったからね。僕にとって最低のシーズンとなるはずが、最高のタイトルを獲得するという結末で終わった。なんだかとても不思議なシーズンだったよ。
2 / 5