それでも、ナカタの加入でだいぶチーム状態が改善されましたね。 M ―― ヒデは本当に有能な若者だ。礼儀正しく、何よりも監督の言うことによく耳を傾ける。性格も良いし、選手としても一流だ。戦術的センス、テクニック、身体能力……どれをとっても最高だ。しかも、PKやFKなどセットプレーのキッカーとしての能力も抜群なんだ。 ペルージャ時代と比較して、どんな点が成熟したと思われますか? M ―― ペルージャ時代からすでに成熟したプレーヤーだった。それに、彼は正真正銘のプロ。一番早く練習場に姿を現して、最後まで残っている。我々監督に幸運をもたらすことのできる選手の一人なのだよ。 移籍会見の席で、ナカタの口から「ボローニャを選んだのはマッツォーネがいたから」との発言がありました。監督は、本当にカンピオーネと良い関係を作るのがうまいですね。 M ―― おそらく、いつも素直な気持ちで選手に接しているからだろう。私は影で人の悪口を言ったりはしない。だから、カンピオーネと呼ばれる選手たちとうまくやってこれたんだと思う。ヒデがそう言ってくれたことには心から感謝したい。彼はボローニャに手を貸してくれるためにここに来てくれたと思っている。 ナカタも、あなたなら自分が一番好きなポジションで起用してくれると考えたのではないでしょうか? パルマのプランデッリとはそのことで揉めましたから。 M ―― 私は、常に中盤の中央で起用するつもりだよ。彼をサイドに据えるのはよほどの緊急事態の時だけだ。ペルージャ時代はトップ下で使っていたが、時間の経過とともに、プレースタイルを少しずつ変化させてきた。クラブにおいても、代表においてもな。今のヒデは、オフェンシブでない役割もこなすことができる。ただ、何もヒデが嫌いでプランデッリは彼をサイドに据えたわけじゃない。戦術的にそうする必要があったから、そうしたまでのことだと思う。私自身、プランデッリは優れた監督だと思っているからな。 ただ、ナカタが中盤のセンター(ボランチ)で起用されたのはローマ時代。しかも、カペッロに試験的に使われた一時期に過ぎなかったように思うのですが。 M ―― 彼の本当のポジションはセンターMFだと思う。センターMFでこそ活かされる資質を彼から感じるんだ。ジャンニーニ、ピルロ、ナカタ……長い監督経験の中で、何人ものトップ下を中盤(ボランチ)にコンバートして再生させた私が言うんだから間違いない。それに、あいつは本当に“ロボット”なんだ。もちろん、良い意味でな。彼に「こうやれ」と指示すると、彼は本当にそのとおりにやってくれる。正確に、しかも時間どおりにきちんとやってくれるんだ。だから、私は彼のことを信じている。ペルージャ時代、ローマのフロントが私にヒデのことをよく聞きに来たんだ。精一杯、ヒデのことを褒めちぎってやったよ。「彼の実力については、すべて私が責任を持つ」とまで言った記憶がある。彼が偉大なカルチャトーレであることに疑いの余地はないんだ。
ナカタの加入で、チーム全体のパフォーマンスも向上しましたね。 M ―― ピッチの中央にはテクニックのある選手が必要だ。その選手を中心にしてパスミスが減れば、自ずと攻撃のチャンスが増える。ボールもうまく回るようになるしな。ヒデの最も良いところ、それは攻撃の“ビルドアップ”と“仕上げ”の両方ができること。攻撃的MFだが、下がったポジションでゲームを組み立てることもできる。とにかく、ヒデにボールを預けておけば何とかしてくれるという感じだ。子供たちのサッカーを見るとわかりやすいのだが、子供たちはチームで一番上手いと思われている選手にボールを集めるだろう? 今のヒデがまさにそれだ。ヒデにボールが集まる。全員がヒデを一番上手い選手だと認めている証さ。私も子供の頃はよくみんなからボールを預けられたものだよ。ただ、私の場合は一番上手かったわけではなく、私のボールを使ってサッカーをしていたからなんだがね(笑)。 最近のボローニャの好調の裏には、やはり心理的な要素もあるということですね? M ―― そういう意味でもヒデの加入は大きい。ただ、ヒデだけじゃない。今までケガをしていた選手が復帰してきたことも影響している。そういったことに刺激されて、他の選手のプレーも良くなっている。もっとも、今のチームはまだまだ成長する余地があるし、これで終わりというチームではない。 ともあれ、残留争いからは完全に抜け出した感じですね。 M ―― 今まで、私は選手にこう言い続けてきた。「今までの敗戦のことは全部忘れろ」とな。ただ、今はこう言いたい。「今までの良い結果は全部忘れろ」。今、我々に必要なこと、それは上昇し過ぎず、だからといって下降し過ぎず、良い感じで“水平飛行”を続けることなんだ。とにかく、今の良い状況を保てるよう、頭を使ってプレーすることが必要になってくる。 今のボローニャは最高の状態に近いと言えます。その中で、欠けているのは決定力。監督自身は誰に期待していますか? M ―― ゴールを奪うことに関しては全員に期待せざるを得ない。絶好調時のベッペなら別だが、今のボローニャの中で、1人でゴールまで持って行けるような選手はいない。つまり、全員で何とかしなくてはならない問題なのだよ。 冬の補強については満足されていますか? ナカタ以外だと、スッシがまずまず使えそうですが、それ以外はあまり期待できそうもありません……。 M ―― 正直なところ、もう少し新戦力を期待していた部分はある。だが、クラブ側の考え方もわからなくはない。クラブも多くの問題を抱えていたようだしな。当初は何人かの選手を放出要員にしていたようだが、他のチームに移ることを拒否した選手もいたらしい。結局、考えていた交換トレードもできなくなってしまった。ともかく、今の我々は現有戦力で戦っていくしかないのだよ。ケガ人が復帰してくれるのを待ちながら、今の戦力で戦うしかないんだ。 先ごろ、監督はボローニャを“小さなミラン”にしていきたいと言っていましたね。その真意とは? M ―― ひそかにミランのようなチームを作ることを目指しているのだよ。もちろん、実現にはまだまだだがね。ボール保持率の高いチームを作りたい。今シーズンはその土台作りをしたいんだ。ボールポゼッションに必要なのは洗練されたテクニック。そのためにも、高いテクニックを持った選手が最大限の力を発揮してくれなければならない。夢は“小さくて偉大なチーム”を作ること。プロとしても組織としても、他の模範になるようなチームを作りたいのだよ。 監督自身の夢は?
M ―― 時とともに、自分の采配能力も向上していると思う。実は、20年前も自分自身は良い監督だと思っていたんだ。だが、今あの頃を振り返るとこう言いたくなる。「20年前の自分はなんて下手な采配をしていたんだ」。今だってネクタイをしたことはないし、社交的に振る舞ったこともない。ただ、監督としての経験と準備だけは身についたような気がする。今後? どうなるだろうな。もしかしたら、ビッグクラブからお呼びがかかるかもしれない。ただ、監督ではなくホペイロ(用具係)としてだろうがな(笑)。 まずはボローニャを“小さくて偉大なチーム”に育て上げてからですね。 M ―― いや、まずはボローニャのセリエA残留を決めることだ。セリエA残留をティフォージとクラブにプレゼントしなければならん。この約束だけは是が非でも守りたいのだよ。 |
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