ある評論家は、30年間も彼のことを“物静かなビジアコ”(注1)と呼び続けている。ただし、彼は決して“物静かな男”ではない。むしろ、話好きと言ってもいいだろう。自分が嫌いなテーマのインタビューに対しては強硬な姿勢を貫くが、好きなテーマに対しては意外なほど雄弁になるのだ。ファビオ・カペッロは、気難しさと礼儀正しさを兼ね備えている。さらに、すべてのことを自分のために利用していこうという“貪欲さ”に溢れている。

彼は、決して落ちついた素振りを見せない。あごに手をあてて、何かを思案しながら常に動き回っている。特に、ユヴェントスにやってきてからというもの、その仕草をすることが多くなったようだ。この夏、カペッロは5シーズン監督を務めたローマを離れ、執拗なラブコールに応える形でユーヴェへとやってきた。ローマから“宿敵”ユーヴェへの突然の移籍、それは、カルチョ界のモラルを揺るがすほどの思い切った決断だった。

カペッロはつい最近まで「ユーヴェには絶対に行かない」と言い張っていた人物である。それだけに、彼のユーヴェ入りが決まった時、カルチョ界には衝撃が走った(注2)。

「私が『ユーヴェには絶対に行かない』と言ったのは、その時のユーヴェが誰も必要としないほど強いチームだったからだ」。サリーチェ・テルメで行われた、サマーキャンプの午後の休憩時間、灼熱の太陽の下で始まったインタビューで指揮官は口を開いた。「その時のユーヴェは常に優勝し、セリエAを席巻していた。私は、そういうチームに刺激を感じなかったんだよ。だが、現在のユーヴェは、チームの全員が何とか昨シーズンのリベンジを果たそうと必死になっている。だから、私はここに来ることを決めたんだ」。

1 / 3