まずは、スクデット争いの話から始めましょうか。
昨シーズンとちょうど立場が逆ですよね。
つまり、追われる側から追う側に立場が逆転したわけですが、
どちらのほうが楽ですか?
デル・ピエロ(以下D) ―― 立場的には昨年のほうがいいに決まってるよ。逆転できるケースは稀だからね。トップにいるチームが絶対的に有利だよ。もちろん、セリエAの優勝は2シーズン連続“大逆転”で決まったし、「2度目がなければ3度目はない」という表現がイタリアでよく使われることを考えると……。
ということは?
D ―― 今シーズンは、僕らの番っていうことだね(笑)。とにかく、昨年はラツィオが春先に連勝して勢いがあったし、逆に僕らには疲労がたまってしまい、大きくスローダウンしてしまった。僕が言う“疲れ”というのは、フィジカル・コンディションが悪かったということではなく、メンタル面の疲れなんだ。「頭がついてこなくなった」って言ったらいいのかな。結局、ラツィオは優勝に値するチームだったと思うよ。
今シーズンも後半戦に入りましたが、ユヴェントスの調子はどうでしょう?
D ―― ラツィオ戦(23節)の大敗は、とてもこたえたね。試合内容も最悪だったから……。そして、ブレッシャ戦(24節)もリードしながら追いつかれての引き分け……あの頃は、ちょっとナーバスになったね。でも、ここにきて失点が少なくなってきたから。ディフェンスに安定感がでてきたことが僕らの強みだね。一方で、僕らFW陣に相変わらず決定力が欠けていることは否めない。ツメが甘いんだ。ゴールを奪うには、もっと貪欲さが必要なんだよ。だって、結局は相手よりもゴールを多く奪ったチームが勝つスポーツがサッカーなんだからね。
その意味で、バティストゥータ、モンテッラ、デルヴェッキオ、そしてトッティを擁するローマの得点力はすごいですよね?
D ―― でも、彼らだってこれからはキツくなると思うよ。まだ、ウチとの直接対決も残っているからね。最後は、テクニックとかフィジカル面だけじゃなくて、精神的にいかに強くあるかがカギを握るんだ。
でも、そのコントロールが一番難しい……。
D ―― そう。なるべく“外界”をシャットアウトするのがコツじゃないかな。勝ち負けのたびに、「スクデットは、ローマで決まり!」とか「ユヴェントスとローマの優勝争い再燃!」なんて騒ぐけど、周囲からなるべく身を遠くに置くことが肝心だよ。そして、ピッチに全神経を集中しなくちゃいけない。最後の答を出す場所は、ピッチ上だからね。
ここで、少し今シーズンを振り返ってみましょうか。まず、開幕戦でさっそくゴールを決めましたよね。苦しかった昨シーズンを振り切る大きな意味があったんではないですか?
D ―― それ以外にもいろいろな意味があったんだ。まず、ナポリのサン・パオロという大きなスタジアムでの試合だったこと。待ちに待った開幕戦だったこと(注:シドニー五輪の関係でセリエAのシーズンインが1カ月遅れた)。0−1でリードされていたこと。そして、相手ベンチに座るのはゼマン(注:3年前の夏、彼が告発したドーピング疑惑発言にデル・ピエロは苦しめられた)。こうした要素が重なって、あのゴールは特別な喜びとなったんだ。
あなたはシーズンが進むにつれ、徐々に調子を上げていきましたよね。ところが、パルマ戦(10節)で落とし穴が待っていた……。
D ―― 僕にとって「あってはならないことが起きてしまった」と、血の気が引く思いだった。フィジカル的にトップコンディションになりつつあった時の出来事だったから、本当にショックだったよ。あの試合の前まで2、3試合連続して調子が良かったからね。あのケガは、「欠場を余儀なくされた」というだけでなく、精神的なダメージも大きなものだった。「僕の周囲がすべて止まってしまった」という感覚に襲われたんだ。幸いにも、短期間で練習を再開することができたから、コンディションを戻すのにそんなに時間がかからなかった。すぐに試合復帰ができたのは、僕にとって何よりの薬だったんだ。
そして、復活を告げるバーリ戦(19節)でのゴール。まさに“アッラ・デル・ピエロ”(デル・ピエロ風)と言えるものでしたよね。
D ―― ……(しばらく沈黙)。いろいろな思いが交錯して、一言で表現できないゴールだった。今から話し出したら明日の夜までかかっちゃうよ(笑)。要約して言うなら、パルマ戦のケガから復帰してもベンチ要員にされて……。スタメンに入れないなんて、僕にとって初めての経験だったんだ。それに、プライベートでも辛いこと(父親ジーノの死去)があったばかりで……。ゴールの瞬間、本当にいろんなことが頭の中を駆け巡ったんだ。
あの試合でも、ベンチスタートだったんですよね?
D ―― そう。後半の20分くらいプレーしたんだけど、ベンチに座っている時から「今日はゴールを決められそうだ」っていう予感があった。だから、試合に出たくてずっとウズウズしていたんだ。
今でも、あの時のゴールが頭をよぎりますか?
D ―― 実を言うと、どうやって決めたのか全く覚えてないんだ。あまりにも体が自然に動いたものだから、記憶にないんだ。試合後、TVで見てビックリしたぐらいだよ。だって、もっと違う形で入ったゴールだと思っていたんだから。あのゴールは、僕1人で決めたというより、誰かが僕に力を貸してくれたような気がするんだ(寂しい笑い)。 |