本誌記事 WebCALCiO 2002
サブタイトル

まずは君の故郷、ブラジルの話を聞かせてもらえるかな?

タッデイ(以下T)─ 陽気な人々が住んでいる国さ。ただ、生活は厳しい。悲惨な生活を強いられている人の数が多いんだ。貧富の差がとてつもなく大きくてね。国民の90パーセントを占める貧しい人たちと10パーセントの金持ち。アンバランスの中に存在している、そんな感じの国だよ。

子供の頃の生活は厳しかった?

T─ 貧しいなんて、そんな簡単な言葉で言えるような状態じゃなかった。そう、極貧と言うべきかな。ただ、サッカーのおかげで経済的にはまともな生活を送ることができるようになった。サッカーを始めた頃の目標は、「家族を楽にさせること」だった。母と2人の弟に、少しでも楽な生活をさせたかったんだ。今、オレの願いは叶った。家族みんなで笑える時がやって来たんだ。だけど……。

何だい?

T─ 弟の一人、レオナルドが天に召されたんだ。弟は死んでしまった。でも、その魂は今でもオレたちと一緒にあると信じている。もう一人の弟、ジエゴは今、ブラジルの大学の体育学部に通っている。ジエゴはダンサーとしてもかなりのレベルにあるんだ。13歳の時にダンスを習い始めて、今は21歳になったんだけど、ダンスを教えて収入を得ているよ。ただ、それだけでは食っていけないから、オレが援助している。母のエリザベッタはオレにとってすべてと言える存在だ。彼女は母であると同時に、父親の役割も果たしてくれた。オレの一番の友人でもあるんだ。

時間を巻き戻してみよう。君は02年夏、シエナにやって来た。そして、そのシーズン、セリエBで1位となりセリエA昇格を勝ち取った。しかし、その後、弟を交通事故で失うことになる……。

シエナ時代のタッデイ。交通事故により21歳で亡くなった弟を偲んで、04−05シーズンから背番号を21に変えた

T─ そう、悪夢のような出来事だ。シーズンが終了して、オレたちは休暇でブラジルに帰るところだった。ミラノの空港に向かう高速道路で事故に遭い、レオナルドは命を落とした……。レオナルドはオレと一緒にイタリアで生活していたんだ。弟の明るい性格と笑顔があったから、楽しい生活を送ることができた。思えば、あの頃は毎日がお祭りのようだった。

彼を失った心の痛みが、君の人生に与えた影響は?

T─ 大きなショックだった。今でも毎日、弟のことを思い出すよ。あの時に背負った心の痛みを克服するのは難しい。でも、母にとってはオレ以上に耐え難いことだったはずだ。あの日、母はブラジルでオレたち2人が戻るのを待っていたんだから。でも、神は弟を連れ去ってしまった……。

あの時、車のハンドルを握っていたのは当時のチームメート、ピンガだった。彼を許すことはできたかい?

T─ 許すも許さないもないよ。彼が悪かったんじゃない。ピンガは大切な友達だ。彼に子供が生まれた時、オレが名付け親になったくらいさ。あの時は、たまたま彼がハンドルを握っていただけ。もしかしたら、あの瞬間、ハンドルを握っていたのはオレだったかもしれない。居眠りしていたわけでもなければ、スピードを出しすぎていたわけでもない。帰省するからと、みんなが幸せな気分だっただけさ。それでも神は、時としてオレたちの運命にちょっかいを出すんだ。

君は苦しみを乗り越えてサッカーに打ち込んでいる。宗教が君の助けになったということかな?

T─ オレは信仰心が強い。時間が許す限り、ミサにも行くようにしているんだ。教会に行くことが好きなんだよ。教会に行って神に感謝の意を示すのは大切なことだと思っている。神のおかげで生きることの意義を感じることができるんだ。

君はゴールを決めた後、ユニフォームに手を入れて、心臓の鼓動を感じさせるようなパフォーマンスをする。あれは神へのメッセージなのかい?

ユニフォームの下に手を入れて、心臓の鼓動を表すようなパフォーマンスは、ブラジルのパルメイラスに所属していた頃に生まれたものだという

T─ あのゴールパフォーマンスはブラジルでプレーしていた頃に生まれたもの。他に誰もやったことがなかったからやっただけのことさ。魂を込めてプレーしている、という意味を込めたつもりだ。ただ、最近は、このパフォーマンスをする時は天を見上げるようにしている。そうすることで、天国にいる弟を近くに感じることができるからね。

お父さんの話がまだ出ていないんだけど……。

T─ 父の名前はワルデーリ。もうすでに亡くなっている。母とはその前に離婚していたけどね。オレが5歳の時に離婚したんだ。父とは時々会っていたけど、経済的な援助は一切なかった。父の稼ぎじゃ家族を養っていけなかったんだ。でも、生きていくためのアドバイスはたくさんもらったよ。

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