スタディオ・オリンピコのクルヴァ・スッド(ローマ側のクルヴァ)は、
彼を“防衛庁長官”と呼んでいる。
ローマの指揮官、ファビオ・カペッロは彼を“エリア内の守護神”と呼んでいる。
そして、我々ジャーナリストにとって、サムエルは
今シーズン前半戦の最優秀新外国人選手である。
「そんなにまで言ってくれて感謝しています。
でも、別に特別なことをしたわけじゃないんですよ。
そんな立派な称号をもらうのには程遠いプレーだと思っています。
セリエAは厳しいリーグです。常に集中していないと痛い目に遭いますから」

文●マッテオ・ダッラ・ヴィーテ text by Matteo DALLA VITE
写真●兼子愼一郎、グエリン・スポルティーヴォ
photo by Shin-ichiro KANEKO/GUERIN SPORTIVO

ワルテル・アドリアン・サムエル、アルゼンチンのフィルマット生まれの22歳である。クイズショーが似合うような男では決してない。「TVに出演するなんて想像するだけでお腹が痛くなっちゃいますよ。アルゼンチンにいた頃は、インタビューだって断っていたんですから。ただ、今回だけは別ですよ。僕自身、どうしてもはっきりさせておきたいことがあるんです。だから、このインタビューを受けることにしたんです。僕の家族や、僕の過去についてはっきりさせておきたいんですよ。それに、僕の名字に関してもね」

敬虔なクリスチャン(カトリック)であるサムエル、彼は実際の年齢よりも老けてみえる。「30歳に見えると言いたいんでしょう? わかってますよ。実際、からかわれることが多いから」とサムエルは微笑む。そして、彼は時を惜しむように早速、本題に入ってきた。「僕のことを孤児だと書いた新聞があったんですが、頭に来ましたよ。僕は孤児ではありませんよ。だって、僕の母、グラディスは僕を産んでくれた本当の母なんですから。僕の母でもあり、僕の妹たちの本当の母親でもあるんです。単に、“もう1人の人間”(実の父)が別の方向に歩んでしまったというだけ。僕にとって“その人”のことはどうでもいいことなんです。だって、僕が4歳の時にオスカル・サムエルという人が僕らのファミリーに入ってきて、僕らにとても良くしてくれた……。とてもいい人なんですよ。だから、僕は彼の姓を名乗ることにしたんです」

彼の元の名前はワルテル・アドリアン・ルーハンだった。

「20歳の時、僕はサムエルと名字を替えたんです。母や妹、そして僕自身にオスカルが注いでくれた愛情への僕の答えだったのです。“もう1人”の人間と会ったことがあるかって? 写真では見たことがありますよ。ただ、彼が僕に会いたがって、僕がそれを拒否したなんてことは作り話ですよ。電話でも話したことがないし、それに、そんな気にもならなかった……。僕自身の人生もある方向に定まったことだし、僕にとっては今のファミリーで十分ですからね」
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