ローマが夢の実現の一部に費やした金額が700億リラ(約38億円)。夢とは、もちろん、スクデットを獲得するという夢である。フランチェスコ・センシはロマニスタに、世界最高との呼び声が高いセンターフォワード、ガブリエル・バティストゥータをプレゼントしたのである。
バティは、アルゼンチン代表として、あのマラドーナの持っていたゴール記録を破り、すでに、アルゼンチンのサッカー史に名を刻んでいるスーパースターだ。彼ほどのストライカーなら、すでに数々のタイトルを手にしていても不思議ではない。彼はフィレンツェの町で9年間過ごした。花の都フィレンツェはバティを養子として迎え入れた。そして、あたかも実の子であるかのように、彼に大きな愛情を注いだ。だが、バティにビッグタイトルをプレゼントすることはできなかったのだ。

バティはフィレンツェの愛情に対し、ゴールの量産という形で報いた。94−95シーズンには26ゴール(うち8PK)を決めセリエA得点王に輝いた。そのシーズン、バティはセリエAの新記録も打ち立てている。開幕から13試合連続ゴールという記録である。その昔、ボローニャのストライカー、エツィオ・パスクッティが記録した開幕12試合連続ゴールという記録を打ち破ったのだ。彼は毎シーズン、多くのゴールを生み出した。しかし、フィオレンティーナの得たタイトルはわずかなものであった。コッパ・イタリア1回、イタリア・スーパーカップ1回、そして、セリエBでの優勝というのがバティの獲得したささやかな勲章であった。そして、ビッグタイトルをフィレンツェで獲得できなかった、ということが、“花の都”に別れを告げ、“永遠の都”に向かう最大の理由となったのである。

“ライバル”から“同胞”へ ―― バティの加入によって、
中田の才能が引き出されることも十分にあり得る

彼が手にする年俸は110億リラ(約6億円)。その数字を知った時、「バティは金に目が眩んだ」と嘆く者もいた。しかし、バティの目的は金ではない。ただ1つの目的は“勝つこと”である。彼が手にする大金はあくまで彼のゴールの副産物にすぎないのだ。
2 / 7