インタビュー・文ジャンニ・ヴィズナーディinterview & text by Gianni VISNADI
ナカタへの批判が高まっているようですが、アンチェロッティ監督はパルマでのナカタのプレーをどう評価していますか?

アンチェロッティ(以下) ―― これまでのところは、チーム、及び、パルメンシの期待に応えるようなプレーはできていないようだね。良い選手であることに変わりはないけれど、パルマの町を落胆させていることは確かだろう。ただ、パルマの不振の原因がナカタにあるのか、それとも他に何か原因があるのか、私には何とも言えない。すなわち、ナカタの不調がパルマのリズムを壊しているのか、もしくは、パルマ全体が機能していないからナカタが活きないのかという問いに関して、私は何も言えないということ。なぜなら、私はパルマを外から見ているにすぎないからね。
 もっとも、批判されることに関しては、イタリアでプレーしている以上はやむを得ないことさ。「批判されているうちが花」とも言えるかな。賛辞が大きければ大きいほど、批判も大きいものなんだ。大事なことは、批判にめげないこと。そして、できるだけ早く、批判を跳ね返すだけのプレーをすること。本当に良い選手ならそれができるはずだよ。

ナカタはどんなタイプのプレーヤーだと思っていますか?

 ―― 決定的な仕事をできる選手。
ゲームの趨勢を変えることのできる選手だと思っているよ。

ナカタにとって最適のポジションは?

 ―― 攻撃的MF。要するに、中央でFWを効果的に動かせるポジションが適してると思う。それに、彼にはテクニックだけでなく、驚異的なスタミナがある。運動量も多いから、背後のカバーリングといった役割もこなすことができる。もちろん、ゲームは一人の選手の力だけで勝てるものではない。ただ、ナカタがチームを勝たせる要素を、数多く持ち合わせていることは確かだ。足下のボールのコントロールには卓越したものがあるし、視野も広い。難しいプレーを簡単に、しかも、ワンタッチでやってのける技術も持っている。
 ただし、ナカタがその能力を最大限に発揮するには最高のフィジカルコンディションが必要なんだ。そして、常に最高のコンディションを保つということは、少なくともイタリアでは非常に難しいことさ。とにかく、ゲーム数がすさまじく多いからね。1週間に2試合が行われることもままあるわけだから、常に最高のコンディションでプレーするというのはほぼ不可能なんだ。私が見る限り、今シーズン序盤戦のナカタはコンディション調整に苦労している感じが強いような気がするよ。

もし、今、ナカタがミランに来たら、彼にどんな役割を託しますか?

 ―― センター軸に据えるだろうね。本来なら、ナカタをレジスタ(プレーメイカー=トップ下としてラストパスをフィードすると同時に下がり気味でゲームのビルドアップをする)として使いたいのだが、現時点で、彼にその役割を求めるのは難しいだろう。ただ、あれだけのスピードとテクニックを持った選手はそうはいない。近い将来、本物のレジスタに成長する可能性を大いに秘めていると思っている。

ナカタのプレーの特徴を最も引き出せるチームは?

 ―― 攻撃的サッカーをするチーム。相手より1点でも多く点を取ろうとするチームのほうがいいだろう。その点では、セリエB降格ライン線上にあり、引き分けによる勝ち点1を求めるようなチームは適していないと思う。具体的に説明しよう。例えば、イタリアでの初年度、ナカタはペルージャで大きな仕事をした。ただ、それは所詮、プロヴィンチャでの小さな成功にすぎなかった。そしてナカタは、ローマに移り、彼個人的には大きな苦戦を強いられた。同じタイプのトッティが同じポジションにいた以上、やむを得ないことだった。だが、ナカタはスクデット争いの天王山で“ドデカイ”仕事をした。大舞台で、試合を決定づける仕事をしたということが、彼をさらに大きな存在にしたと言えるのだ。これは、プロヴィンチャでプレーしていては決して体験できないものさ。


今後、彼がさらなる成長をするためには何が必要ですか?

 ―― まず言っておきたいのは、ナカタはすでにセリエAで大きな成功を収めているということ。ペルージャからローマへ、そしてローマからパルマへ。チームを変えるたびに、彼の市場価格(移籍金)は倍増してきた。これだけでも、「すでに大きな成功を収めた」と言うべきだろう。もちろん、“さらなる成長”だって十分に可能だよ。何しろ、彼はまだ若いのだから。彼にとって、おそらく、来年のW杯がさらなる飛躍の場となることだろう。もし、W杯でナカタが活躍し、日本が好成績を収めるようなら、ナカタの来シーズンはさらなる大きな飛躍のチャンスとなる。W杯は選手を大きく成長させる場なんだ。
 また、今シーズンのナカタには痛烈な批判が浴びせられているけれど、だからといって、イタリアがナカタを軽視しているというわけではない。批判があるということは、それだけ、ナカタの能力を評価している証拠なんだよ。

チームの不振の責任をナカタ一人に押しつけているような風潮がありますよね?

 ―― パルマに何が起こっているのか、私にはわからない。そういうことは内部の人間しかわからないものだからね。しかも、私はミランの監督に就任したばかり。今の私には他のチームの内情を分析する余裕はないよ。だから、今、パルマの内部で何が起こっているのかなんて知る由もない。ただ、一般的な見方から言えば、一人の不調でチーム全体が機能しなくなるなんてことはあり得ない。だから、ナカタがパルマ不振の元凶だなんて言えるわけがないんだ。絶対、他にも多くの要因があるはずさ。良い悪いは別にして、近代サッカーでは、一個人がチーム全体の命運を握るなんてことはないんだ。

アンチェロッティ監督、もし可能ならナカタを獲る気がありますか?

 ―― もちろん、使ってみたい選手だよ。監督という職業に就いている者なら誰でも、ナカタを自分のチームに欲しいと思っているはずさ。確かに、まだ改良の余地はある。だが、素材として最高なものを持っていることに異議を唱える監督はいないだろう。ナカタ獲得に“ノー”という監督はいないはずだよ。まずはナカタを獲得して、それから、ナカタが最も活きる使い方を考えるだろうね。

ナカタの長所と短所は?

 ―― 洗練されたテクニックは魅力だね。そしてそれ以上に、彼のスタミナ(運動量の豊富さ)、彼の身体能力に魅力を感じている。また、私はナカタのことを、いわゆる“頑固者”タイプだと思っているよ。求道精神が旺盛なプレーヤーという印象を持っているんだ。
 あえて短所を挙げるならば、まだカリスマ性には欠けるね。無言でチームを引っ張って行くというレベルにまでは達していない。もちろん、日本では大スターだろう。だが、イタリアではどうしても“遠慮している”と見られがちなんだ。だから、この面でも、W杯がナカタにとって大きなチャンスになるんじゃないかな。つまり、W杯で活躍できれば、カリスマ性も生まれてくるだろうということ。あのテクニックと身体能力に、カリスマ性が加われば、さらなる成長を遂げることは間違いない。

ナカタはイタリアでどのレベルまで到達すると思っていますか?

 ―― 繰り返しになるが、ナカタはすでにかなりのレベルに達している。ナカタがペルージャ入りを決めた時、イタリア国内ではその能力に関して、疑問を呈する者も少なくなかった。彼の前任者(三浦知良)のイタリア挑戦が不幸な結果に終わったこともあるしね。要するに、イタリア人の間には、日本人のサッカーレベルに対する、懐疑心が渦巻いていたのだよ。だが、ナカタはすべての懐疑心を取り払った。それだけでなく、日本サッカーのレベルの高さをしっかりと立証したのだ。それだけでも大きな成功と言えるだろう。
 そしてさらに、ペルージャ、ローマ、パルマと毎年のように移籍を繰り返しながらも、常に、“重要な選手”であることを立証している。ナカタはセリエAのトップレベルに定着した選手なんだよ。さらなる成功……それはナカタ個人の力だけではどうすることもできないこと。なぜなら、ナカタがより高いレベルに“到達”できるかどうかは、ナカタが所属するチームがどれだけの成績を残せるかにかかっているのだからね。
I N T E R V I E W - 1
カルロ・アンチェロッティ
1959年6月10日★レッジョ・エミーリア生まれ
現役時代は、ミランの黄金時代のMFとして活躍。引退後は、代表でアリゴ・サッキのアシスタント(助監督)を務め、監督修業に励んだ。監督としては、セリエBのレッジャーナのセリエA昇格を果たし、96−98シーズンはパルマの監督としてリーグ2位に貢献。99年にはリッピの辞任を受けてユーヴェの監督に就任、昨シーズンは2位でシーズンを終えた。今年11月、解任されたテリムの後釜として、ミランの監督に電撃就任した。
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