| インタビュー・文●ルイージ・ロニョーニinterview & text by Luigi ROGNONI |
ナカタへの批判が高まっているようですが、マッツォーネ監督はパルマでのナカタのプレーをどう評価していますか?
マッツォーネ(以下M) ―― 確かにメディアは容赦ないな。これまでもそうだったが、どうも、ナカタに関して妬みを抱いているようだね。ナカタに関しては、「ミスは許さない」という雰囲気が感じられるよ。情状酌量なんて雰囲気は全くないからね。言い訳はきかないんだ。ただ、パルマは彼にとって、ペルージャ、ローマに続く、3つ目のチーム(イタリアにおいて)だということを忘れてはいかんよ。全く同じサッカーをするチームなんて存在しないものなんだ。それぞれのチームに独特のスタイルがあり、それぞれの監督に独自の考えがある。
ナカタはこれまでの3年間、常に新たな環境への同化を強いられてきた。パルマに移ってからのナカタは、確かに本来のプレーをしていない。ただ、自らのプレーを忘れてしまったわけではない。環境への順応に手間取っているだけなんだ。もうちょっと彼に時間を与えようよ。それに、パルマ全体が問題を抱えているということも忘れてはいけないね。ナカタの不調はパルマ不振の原因の一つかもしれないが、決して、ナカタだけが悪いのではない。チーム全体の問題だということをみんなが理解するべきだよ。
ナカタはどんなタイプのプレーヤーだと思っていますか?
M ―― 非常にいい選手だと思っている。とても精神力の強い男だよ。
ナカタはこれまで様々なポジションを経験しています。
トレクアルティスタ(トップ下)、左サイド、中盤の底…
…どのポジションがナカタにとって最適だと思っていますか?
M ―― 4−3−1−2、ないしは、3−4−1−2のシステムでのトップ下が一番いいだろう。あるいは、4−4−1−1での攻撃的MFの役割、すなわち、時にはセカンドアタッカーとして、時には1トップの背後で自由に動き回りながら、両サイドの攻撃参加を容易にするといった仕事も彼には向いていると思う。ただ、それはあくまで二次的なもの。理想は2トップの背後でプレーすることだろうな。
もし、今、ブレッシャにナカタが来たら、彼にどんな役割を託しますか?
M ―― そんなことをしたら、彼のサッカー人生は一歩後退してしまうじゃないか!(笑)まあ、冗談はさておき、ペルージャ時代のナカタはダブルボランチの前でプレーしていたんだ。当時のペルージャでは、すべてのボールが彼を経由するようになっていた。彼は自由に動きながら攻撃を組み立てていたんだ。私自身、彼にさほど守備を要求しなかったつもりだよ。部分的なカバーリングは求めたけれどね。そしてナカタはいい仕事をしてくれた。もし、もう一度ナカタを使う立場になったら、ペルージャ時代と同じポジションに据えるだろうね。ただ、今シーズンのブレッシャではペルージャ時代とは違うシステムを活用している。グアルディオラのボランチとしての能力を最大限に活かすために、5人のMFをラインに据えているんだ。
ローマに移ってからのナカタは、ほとんど、守備的MF、すなわち、2トップとトッティの背後で使われていた。あれではナカタの持ち味が発揮されることはない。ドリブルで相手DFをかわし、エリア内に入っていくというプレーがほとんどなかっただろう?ナカタの持ち味が死んでいたということさ。カペッロの考え方が間違っていたと言っているわけではない。ただ、あのポジションにナカタを据えることは時期尚早だったということなんだ。イタリアサッカーでやっていくということは大変なことなんだよ。周囲の環境、心理的要素……種々の問題が生じるんだ。
だから、ひとまずは、彼自身が慣れたポジション、すなわち、トレクアルティスタとして起用すべきだったと思っているよ。そして“頭”や“足”が完全にヨーロッパサッカーに馴染んだ時点で、プレーメイカー、すなわち、アルベルティーニのポジションを任せても良かったんじゃないかな。
ナカタの持ち味に合ったチームはどこでしょう?
M ―― 2トップの背後にトップ下を置いているチームというのが最低条件。パルマはこれまで常にトップ下を置いてきた。その面では理想的なのではないかな。
ナカタがさらに進化するためには何が必要だと思いますか?
M ―― 理論的にはすべてを満たした選手と言えるね。あえて言うなら、“ずる賢さ”かな。だが、それは彼のサッカー哲学に反することだろう。なぜなら、彼は全力で戦うことをモットーとしているんだから。相手のボールを奪う時も、彼は決して後には引かない。すべてのプレーに全力を尽くすことをモットーにしている男だよ。もっとも、すべてにベストを尽くすことでコンディションを保つことが難しくなっているというのも確かだろうな。ゲームによって、出来不出来があるのも、フィジカル・コンディションを高いレベルで一定に保てていないということが原因だと思うよ。だから、今のナカタにとって、フィジカル・コンディションは最大のテーマだろう。体が動く時、それはまさに、頭が回転する時なのだから。
パルマ不振の原因をナカタの不調に求める声が高まっていますが、いったい、パルマに何が起こっているのでしょうか?
M ―― よそのチームの不振の原因をとやかく言える立場ではない。ブレッシャが抱えている問題だけで十分だよ。ただ、一つだけ言えること。それは、仮にファンやマスコミがナカタをチーム不振の元凶だと思っていても、フロント陣や監督は序盤戦の不振がナカタの責任だとは考えていないということ。ウリヴィエリは公の場でナカタを擁護していただろう?パッサレーラだってナカタをかばうはずさ。
もしかすると、問題は、イタリアサッカー界でナカタがすでに“未知の存在”ではないということかもしれない。相手チームの選手全員がナカタのプレーを知り尽くしているんだ。ナカタをマークする選手たちは、どうすればナカタを封じ込めることができるか、すでにわかっているはずだよ。つまり、ナカタにとって非常にプレーしづらい状況が実現していると言えるだろうね。それに加えて、パルマのリーダーとしての責任の他に、彼には地元開催のW杯で主役を演じなくてはならないというプレッシャーもあるだろう。とにかく、彼は多くの責任を背負い込んでしまっている。それが彼のプレーを萎縮させている原因かもしれない。
もし可能ならナカタを獲る気がありますか?
M ―― そんなバカげた質問はするなよ。獲るに決まっているじゃないか!
ナカタの短所を挙げろと言われたら?
M ―― ナカタをよく知らない人は、「性格的に問題がある。閉鎖的だ。クールすぎる」と言うかもしれないが、私はそうは思っていない。ペルージャにいた頃、チームメイトやクラブフロントと、最も仲良くしていたのはナカタだからね。それは私がペルージャの監督をやっていた時だけではない。ペルージャに入ったばかりの頃もチームにとても馴染んでいたと聞いているよ。
ナカタの長所は?
M ―― まず第一に、洗練されたテクニックと高い身体能力だろうな。個人的に驚いたのは学習能力が非常に高いということ。何かを教えるとそれをすぐにモノにしてしまうんだ。高いインテリジェンスと強いプロ意識を持っていることの証明だろう。ナカタのことを“コンピュータ”と呼ぶ選手もいたくらいさ。それは、コンピュータのように“クール”という意味ではないよ。ピッチ上の動きにしても、プレーにしてもコンピュータ並みに完璧だったということさ。彼の体内にはコンピュータ・チップが組み込まれているんだ。それに引き換え、私は年老いた監督だよ。(笑いながら)ペンと紙が必要な世代なのさ。
ナカタはイタリアで、どのレベルまで到達すると思っていますか?
M ―― すでに相当高いレベルまで達しているじゃないか!多くの出場機会には恵まれなかったが、ローマの一員としてスクデット獲得に大きな貢献をした。パルマへの移籍も決して格下げではなかった。パルマはローマ同様に高い潜在能力を持ったチームだからね。ただ、どんなにすごいチームでも常に勝てるなんて保証がないのがサッカーの世界なんだ。すべてがネガティブに動くことだってあり得るんだ。悪いことが続いたからといって嘆き悲しむことはない。壁は越えるためにあるのだよ。このことはナカタにも何度も言ったつもりさ。 |
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V I E W - 3 |
カルロ・マッツォーネ
1937年3月19日★ローマ生まれ |
| 現在64歳のセリエAの最長老監督。ローマを3シーズン率いた時に、現イタリア代表のトッティをトップチームに抜擢した。カタンザーロ、ペスカーラ、カリアリ、ボローニャ、ペルージャといったプロヴィンチャのクラブのセリエA残留を果たすなど、指導者としての才能には議論の余地が無い。現在はブレッシャで指揮を執っている。バッジョがブレッシャに入団する際に、マッツォーネが解任されないことを条件にしたのは有名な話だ。 |
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