くばかりの聡明さで、レアル・マドリーを“ドリームチーム”に変貌させようとする男、ホルヘ・アルベルト・バルダーノ。レアル・マドリーで現役時代に終止符を打ち、引退後は監督も務めた彼は、現在、フロレンティーノ・ペレス会長が頭に描いた理想図を具現化する仕事に携わっている。そう、今はペレス会長の右腕として、つまりGMとして、“ドリームチーム”実現のために世界中のタレントをかき集めているのだ。ロベルト・カルロスにはじまり、ジダン、そしてフィーゴに至るまで、さらには現在狙いを定めているヴィエラ獲得を果たすべく世界中を飛び回る男、ホルへ・バルダーノ。アルゼンチン生まれの彼はスペイン人の女性と結婚し、スペイン・パスポートとアルゼンチン・パスポートの2つを所有している。彼が最も忌み嫌うもの、それはプロヴィンチャ主義、すなわち引き分けによる勝ち点1狙いのサッカーである。
インタビュー、文●マッテオ・マラーニ Interview and text by Matteo MARANI
写真●グエリン・スポルティーヴォ Photo by GUERIN SPORTIVO

  なぜバッジョがプロヴィンチャにしか
活躍の場を見出せなかったのか、
私には理解できないんだ

“天敵”サッキがミランの監督に就任した96−97シーズン、バッジョの出場機会は激減した
イタリア国内にいると、どうもカルチョがスペクタクル性を失いつつあると思うのですが、むしろ、遠くから見たほうがいいのでしょうか?

バルダーノ
(以下V) ―― 
そう、残念ながらセリエAがいいサッカーをしているとは思えない。フィジカル的要素に重きを置いて、テクニックをないがしろにしているような印象が否めないんだよ。イタリアは、ゾラのような選手が海外に行かざるを得ない状況に陥ってしまった事実を忘れてはいけないんだ。バッジョの現状を思い起こしてみようじゃないか。なぜバッジョがブレッシャのようなプロヴィンチャにしか活躍の場を見出せなかったのか、私にはどうにも理解できないんだよ。まぁ、ミランやインテルでベンチ生活を強いられていたこと自体、私にはすでに理解できないことなんだがね。

そういったことは“馬鹿げている”と?

V ―― 私が最も馬鹿げていると思うのは、デル・ピエロのような選手に、中盤の低い位置でディフェンスを要求するようなサッカーなんだよ。

イタリアサッカーとスペインサッカーとを比較すると?

V ―― イタリアのサッカーはダイナミックだ。でも、どのチームも同じようにフィジカル中心のサッカーという印象だな。画一的なんだよ。それに比べて、スペインはそれぞれのチームにそれぞれの個性がある。オランダ、イタリア、イングランドなど外国人監督が多いリーグは、バラエティー豊かで個性的なチームが生まれやすいと言えるんじゃないかな。

他にも理由がありますか?

V ―― そうだな、スペインサッカーを魅力的にした要因は3つあると思っている。まずはブトラゲーニョ(80年代のスペインを代表するストライカー。レアルには83−84シーズンから94−95シーズンまで在籍。スペイン代表としても86年W杯に出場した)の存在を忘れてはいけない。彼はスペインサッカーに新たな色を加えたんだ。ブトラゲーニョは、彼独自のサッカーを確立したんだよ。そして新しい世代の多くのプレーヤーがそんな彼を見本にした。つまり、彼の存在はスペインサッカーに大きな影響を与えたんだ。2つ目はヨハン・クライフの存在だよ。彼はプレーヤーとしても監督としてもスペインサッカーに新しい視点を与えたからね。それから3つ目は、スペインのメディアの影響力だろう。スペイン人にサッカーの楽しみ方を教えたのはマスメディアだと言っても差し支えないと思うね。

あなたもその一人ですよね?

V ―― 確かにそうかもしれない。私が『EL PAIS』紙の論説委員をしていた頃、“ベル・ジョーコ”(美しいサッカーの意味)を奨励する記事を書いたものだよ。でも、それは私だけではなかった。スペイン中の新聞が、“楽しいサッカー”、“美しいサッカー”を奨励していたんだよ。
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