チームの最もうれしい“誤算”は
ナカタの復活
 チームのサマーキャンプ先、アオスタ渓谷州のモルジェへと出発するにあたり、プランデッリは高らかな宣戦布告をすることなく、ひたすら「辛抱」を訴えた。自分の仕事の成果が表れるまで、少なくとも2カ月は必要だとくり返したのである。“2カ月”、つまり、セリエA開幕にチーム作りの完成を合わせるのが彼の計画であった。実際、プレシーズンマッチでは未完成でガッカリさせられるようなプレーが続いた。パルマは、マンチェスター・ユナイテッド、アヤックス、バルセローナが参加した8月初めのアムステルダム・トーナメントを手始めに、チェゼーナ、アンコーナとのテストマッチに至る数々の試合をこなしていったが、満足できる内容のゲームは一つもなかった。プランデッリのパルマがようやく頭をもたげ始めたのは、リビアのトリポリで行われたイタリアスーパーカップのユヴェントス戦だったのだ。結果的には、DFの凡ミスが災いして1−2で敗れたものの、後半は、前年度のスクデットチームを大いに苦しめたのである。

 そして、今シーズン、プランデッリは予想どおり4−4−2の布陣でスタートを切った。彼が自信を持って採用するこのシステムに、サッキも大満足であった。ところが、時間の経過と共にプランデッリは徐々にシステムを変更。見方によっては4−3−2−1と表現してもよい4−3−3へとフォーメーションを移行したのだ。事実上、純粋なFWとしてトップに固定されているのはアドリアーノ1人だけ。アドリアーノの背後に位置し、リフィニトーレ(パッサーの意味)として使われているのが、ユヴェントスへ放出したディ・ヴァイオの後釜として加入したルーマニア代表のムトゥ、それにナカタということになる。2人は、一方が右サイド、もう一方が左サイドをベースに動き、必要とあらば中に切り込んでシュートも仕掛ける(ナカタよりもムトゥにこの動きが多く見られる)。だが、何と言っても彼らの素晴らしさは、深くえぐるような攻撃とその攻撃の流れをうまく作る術を知っているところにある。この新システムの導入により“ニュー・パルマ”が魅力的なチームに仕上っただけでなく、実質的に勝ち点を積み重ねることができるチームとなった。いわば、一石二鳥の効果を生んだということである。

 チームの最もうれしい誤算は、ヒデトシ・ナカタの“復活”である。それはまるで、しぼんでいた花が再び大きく花開き始めたかのようだ。昨シーズン、つまり彼にとってパルマでの1年目は苦悩に満ちたものだった。戦術にうまくはまらず、コンディション的にもイマイチで、低迷するチームのムードにも足をひっぱられた。とはいえ、カルミニャーニがベンチに座ったシーズン終盤は、中盤の左サイドに据えられ、ある程度納得のいくプレーを披露している。そして、忘れてはならないのがコッパイタリア決勝、敵地デッレ・アルピでユヴェントス相手に挙げた貴重なゴール。なぜならこの1得点こそ、パルマにトロフィーをもたらす決定弾となったからだ。ナカタのアウェーゴールがモノを言い、第2戦をジュニオールのゴールで1−0と辛勝したパルマの頭上にコッパイタリアは輝いたのである。


 この夏、ナカタは、W杯後のバカンスの大半をフロリダで過ごし、各種スポーツの一流選手に個別メニューでフィジカルトレーニングを施す専門スポーツセンターで調整に励んだ。こうして、ナカタは万全なコンディションでパルマに戻って来たのである。それは、プレシーズン合宿のスタートから、誰の目にも明らかだった。だが、開幕当初は、ちょうど1年前にウリヴィエリの下で苦しんだように、プランデッリの敷く4−4−2に翻弄されてしまう。このシステムで彼は中盤の左サイドとして起用されていたのだが、この位置にはブレッシャーノ、ジュニオール、E.フィリッピーニと“ライバル”も多く、チーム内での立場は不動とは言えなかったのである。ところが、4−3−2−1の導入が状況を一変させる。“プロの鑑”ナカタは、監督の新システムにすぐさま適応。ポジショニングを上げ1トップの背後に位置するようになった彼は、マイボールの時にはFWとして、敵ボールの時にはサイドハーフとしてプレーすることで、一気にレギュラーポジションを手にしたのだ。プランデッリのシステム変更は、パルマにとってもナカタにとっても吉と出たのである。

 新しいシステムは、現在のパルマにかなりフィットしているように見える。チームがコンパクトに組織されることで、選手の動きがよりアグレッシブになり、ゴールの数も増えた。プランデッリはターンオーバーによって、選手たちがコンディションをなるべくベストの状態に保てるよう気を配っている。とはいえ、外すことのできない“アンタッチャブル”なレギュラーリストが彼の頭の中にはあるようだ。その“リスト”には次のような名前が書かれている。GKフレイ、“蘇った”ベナリーヴォ、センターバックの名コンビ、ボネーラとフェラーリ、MFのラムシ、ブリーギ、ナカタ、そしてFWのアドリアーノとムトゥ。一方、システム変更によって割を食った選手もいる。マルキオンニやブレッシャーノである。だが、セリエAに加え、UEFAカップやコッパイタリアも戦うパルマのこと、彼らも含め全員に出場のチャンスが与えられることは間違いない。
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