インテルの頭脳は、今やトルコ代表の頭脳である。インテル初年度となった昨シーズンをほぼ無意味に過ごしたエムレだったが、今シーズンがスタートするや否や、自らのプレーぶりによってエクトル・クーペルとネラッズーラのティフォージの信頼を一気に勝ち得た。彼は、数多くの問題を抱えたインテルの中にあって、問題処理能力を持ったエンジンとして、ピッチ上を所狭しと動き回っているのだ。彼がいるからこそ、インテルは、スクデット争いに加わっていると言えるだろう。
22歳のエムレは、いわゆる“古典的な”レジスタではない。そもそもクーペルの敷くフォーメーション、4−4−2においては、古典的なレジスタの仕事は要求されていない。彼に求められているのは、ピッチ中央で動き回ることである。彼が試合に出場しない時、インテルの機能はマヒしがちである。彼を欠いたインテルは、ボールを奪ってから攻撃に移る過程が簡単に予測されてしまうのだ。
エムレは本来、トレクアルティスタ(トップ下)である。170センチ、68キロという小柄な身体と俊敏な動きは、まさに、近代サッカーにおける典型的なMF像を感じさせる。彼の洗練されたテクニックとタフな運動能力は相乗効果を発揮し、攻撃において相手チームに脅威を与えている。また、今のエムレは、守備面でも大きな貢献を果たしている。インテリスタはそんなエムレを“ボスポラス海峡のマラドーナ”と呼び、絶大な信頼を寄せているのだ。シーズン前半戦、スタディオ・オリンピコで行われたラツィオ戦で決めた鮮やかな2つのゴールに、インテリスタは魅了された。だからといって、彼がマラドーナのようなファンタジスタ、ないしは、トップ下であったことは一度もない。彼はマラドーナというより、インテルが最高勝ち点記録を樹立してスクデットを獲得した時のヒーロー、ロタール・マテウス型のプレーヤーであると言える。
丸い顔、明るい性格、賢そうな微笑み、好青年エムレは、春のラストスパートに向けたインテルの“天秤の分銅”とでも言うべき選手である。ユヴェントスやミランと比べてチームプレーという面では劣るものの、個人技の集団としては群を抜くチームの軸として、エムレはなくてはならない存在なのである。彼こそ、クーペルが望む攻守のバランスをコントロールできる選手なのだ。 |