驚異のパワーvsマリーシア  
 
 インテルの32番に恐怖を抱く男がいる。アントニオ・ヴァレンティン・アンジェリッロ、セリエAのシーズンゴール記録を保持している男である。彼が58−59シーズン(18チームによるリーグ戦)に記録した33ゴールという数字は、未だに破られていない。今シーズンのヴィエリは、このままのペースでゴールを量産すれば、アンジェリッロの記録を上回るかもしれない。さて、そのアンジェリッロは2人をどう見ているのだろう?

 「そうだね。私もヴィエリに投票するよ。記録のこと? 彼が破ってくれたら、それはそれでいいと思っている。記録はいつかは塗り替えられるもの。インテルの選手に記録を更新されるのなら良しとしなくちゃね。なぜインザーギでなくてヴィエリかって? ヴィエリのほうが現代のサッカーに合っていると言えるからさ。あの体力は“脅威”だね。インザーギはスキを見せるとそこにつけ込んでくるタイプのストライカー。エリア内での動きはヴィエリよりも俊敏でスピードもある。ただ、迫力に欠けることは否めない」
ヴァレンティン・アンジェリッロ (ヴィエリ派)
Valentin ANGELILLO
アルゼンチン生まれ、後にイタリア国籍を取得。58−59シーズンに樹立した33試合で33ゴールという偉業は、18チーム制の最多ゴール記録として現在も残っている。
 
 
  70年代のイタリアサッカーのシンボル的な存在だったピエトロ・アナスタージもヴィエリ派である。

 「私ならもちろん、ヴィエリを選択するさ。ヴィエリが完璧なFWだと思っているからだよ。インザーギはエリア内で危険なストライカーだ。それは認める。だが、スペクタクルという点では見劣りするし、テクニック面でも物足りなさを感じてしまう。ヴィエリのほうが上だよ。それから、ヴィエリに関しては、あのガッツが何とも言えず好きだな。その他、テクニック面で言うと、ヘディングでも決めることができるし、足でも決められる。リーヴァ、ボニンセーニャに匹敵するストライカーだと思うね」
ピエトロ・アナスタージ (ヴィエリ派)
Pietro ANASTASI
70年代のユヴェントスを代表するストライカー。ユーヴェ以外にもインテル、アスコリでプレー。イタリア代表として25試合に出場、8ゴールを決めている。
 
 
 アナスタージが例に挙げた“グランデ・インテル”のストライカー、ロベルト・ボニンセーニャは、
 「もし私がクラブの会長だったら2人揃えて獲得するだろうね。この2人のコンビネーションは最高だと思っている。あえて、一人だけ選べと言われるなら、ヴィエリを獲るだろうな。ヴィエリはまさにセンターフォワードタイプの選手だからね。それに、私自身のプレースタイルと多くの類似点があるような気がするんだ。左利きという点も似ているしね」
と語っている。
ロベルト・ボニンセーニャ (ヴィエリ派)
Roberto BONINSEGNA
ユヴェントス、カリアリ、インテル、ヴェローナなどでプレー。代表では22試合に出場、9得点を記録している。セリエA得点王に2度輝いている。
 
 
 ベッペ・サヴォルディは、
「ゴールを見る限り、インザーギを選びたいな。ただ、ヴィエリのほうが完璧なストライカーだという印象はあるね。プレースタイルという観点からすると、ヴィエリがインザーギを上回っていることは明らかなんだ。要するにインザーギはゴールハンター、ヴィエリはチャンスを作ることもできるし、フィニッシュすることもできる。より完璧なストライカーというのはそういう意味さ」
とヴィエリ支持を説明した。
ベッペ・サヴォルディ (ヴィエリ派)
Beppe SAVOLDI
ボローニャでプレー。72−73シーズン、17ゴールを記録してセリエA得点王となる。代表では4試合に出場し、1ゴールを記録している。
 
 
 さて、アルド・セレーナはどちらを選んだのだろうか?

 「ボボは世界にただ一人と言ってもいいFWだよ。他に類を見ない身体能力を備えている。すごいパワーさ。ただ、ピッポの研ぎ澄まされたゴール嗅覚も大きな魅力だ。どちらかって? やはり、ヴィエリだろう」

とヴィエリを支持した。
アルド・セレーナ (ヴィエリ派)
Aldo SERENA
インテルの他、ミラン、ユヴェントスでもプレーしたストライカー。88−89シーズン、インテルが記録的な勝ち点でスクデットを獲得した年、22ゴールでセリエA得点王に輝く。
 
 
 “チッチョ”・グラツィアーニは2人を次のように対比している。

 「ヴィエリは、エリア内でスペースを作れることからして、典型的センターフォワードタイプの選手と言える。インザーギはマリーシア(狡さ)に優れ、DFのボールをかっさらってでもゴールに持っていくタイプのFW。僕はヴィエリ型のFWのほうが好きだな」
フランチェスコ・“チッチョ”・グラツィアーニ (ヴィエリ派)
Francesco Ciccio GRAZIANI
76−77シーズンに、21ゴールで得点王に。トリノ、フィオレンティーナでプレー。代表では64試合に出場し、23ゴールを記録している。82年W杯優勝のメンバー。
 
 
 ヴィエリ派の最後は、我が国最初のバロン・ドール受賞者、W杯優勝の立役者、パオロ・ロッシである。彼の意見を聞いてみよう。

 「2人は全く違ったタイプのFWだ。インザーギはボールをゴールに押し込むタイプのFW。それに対し、ヴィエリは全能で、世界最高のFWの一人と見なされている選手だ。レベルが違うという感じがするね」
パオロ・ロッシ (ヴィエリ派)
Paolo ROSSI
ヴィチェンツァ時代の77−78シーズンに24ゴールを記録し、得点王に輝く。後にユヴェントスでプレーし、スクデット2回、チャンピオンズカップ1回、UEFAカップ1回獲得。78年のW杯アルゼンチン大会では3ゴールを、そして、82年のスペイン大会では最終3試合で6ゴールを決め、イタリアを優勝に導くと同時に大会の得点王になる。

「ヴィエリは世界最高のFWの一人。
レベルが違うという感じだね」

――パオロ・ロッシ
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