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ガローネには、かなり前から、「サンプを譲り受けないか」という打診があったようだ。しかし、ガローネは、「サッカーには興味がない」という理由で、その申し出を断り続けていた。彼はその情熱をゴルフと狩猟に注いでいたのである。また、63年にノルウェーでサケ釣りをしている最中に亡くなった父親のエドアルドが残した“訓戒”も頭に残っていたのだろう。エドアルドは、常々、息子リッカルドにこう言っていたそうだ。「新聞とサッカーチームだけは絶対に買うな!」。 しかし、今年の1月23日に満67歳の誕生日を迎えたガローネは、自分がオーナーとなったこの1シーズンで、それまでに体験したことのない情熱につき動かされた。彼は、02−03シーズン、なんとホームで行われた全試合を観戦したのだ。仕事でどうしても行けない試合を除けば、アウェーゲームにもほとんど帯同したという。帯同中も、自分の存在を選手に感じさせるために、できる限り選手と行動をともにしたというから、その情熱には頭が下がる。ところで、今シーズン、ガローネは、自らにいくつかの“決まりごと”を課していた。それは、「現場には、決して干渉しない」、「一度選んだ人材を信頼する」というものである。要するに、彼はチームと行動をともにするが、現場の仕事に余計な口を挟まないということなのだ。 ガローネは、かつてのサンプの副会長で現在は『ERG』の代表取締役の一人であるパオロ・ランツォーニのアドバイスに従い、ベッペ・マロッタをGMとしてフロントに迎え入れた。マロッタは、ヴェネツィアやアタランタなどで実績を残した敏腕マネージャー。ヴェネツィアにヒロシ・ナナミを連れてきたのも彼である。マロッタは、ビッグクラブとの豊富な“コネ”を活かし、ミランからマウリツィオ・ドミッツィ、アンドレア・ラービト(ともに共同保有)、ユーヴェから、U−21代表のアンドレア・ガスバローニ(共同保有)、マッティア・カッサーニ(レンタル)といった、将来性のある若手を次々に獲得した。こうしたマロッタの辣腕による選手の獲得が、02−03シーズンのサンプドリア躍進の最大の要因だったことは言うまでもない。第2の要因は、ヴァルテル・ノヴェッリーノを監督に招聘したことである。ノヴェッリーノは、過去5年間で3度のA昇格(ヴェネツィア、ナポリ、ピアチェンツァ)、2度のA残留(ヴェネツィア、ピアチェンツァ)を果たした監督である。開幕前、マロッタはこの隠れた名将に白羽の矢を立てたのだ。マロッタとノヴェッリーノは、ヴェネツィア時代に一緒に仕事をした、言わば“旧知の仲”だった。マロッタへの厚い信頼と、ガローネの“サンプ再建計画”の堅実な考え方が、ノヴェッリーノをして、迷わずセリエBでの采配を引き受けさせたのである。 マロッタが、個人的な繋がりからノヴェッリーノを選択したように、ノヴェッリーノは過去に自らが育てた“教え子”を集めるようフロントに要請した。セルジョ・ヴォルピ、フランチェスコ・ペドーネ、ファビアン・ヴァルトリーナ、ステーファノ・サッケッティ、マッシモ・パガニン、サルヴァトーレ・ミチェーリ。いずれも、かつてノヴェッリーノが可愛がっていた“子飼い”の選手ばかりである。特に、ヴォルピ、ペドーネの2人のMFは、シーズンを通じて、非常に重要な働きをした。ヴォルピは自己最高となる8ゴールを記録。代表に招集されると噂されるほどの活躍でサンプを牽引した。結局、トラパットーニ監督からお呼びはかからなかったが、「Bの選手がアッズーリに」という可能性が議論されること自体、異例なことである。
もっとも、サンプドリアのセリエA復帰に貢献したのは、ノヴェッリーノ“子飼い”の選手ばかりではない。以前からサンプにいた選手も活躍した。例えば、DFのアレッサンドロ・グランドーニは間違いなくイタリアでも有数のセンターバックとして評価されるだろう。また、教え子以外の移籍選手の中にも決定的な役割を果たしたプレーヤーがいた。なかでも、チーム最多の16ゴールを挙げたFWのファビオ・バッザーニの名を挙げないわけにはいかない。彼は強靭なアタッカーであるだけでなく、チームの戦術に完璧に対応できる柔軟性を持ったFWだった。バッザーニの評価は急上昇しており、ユーヴェのスカウトで、かつてサンプのチームマネージャーを務めていたドメニコ・アルヌッツォや、ミランのGMアリエド・ブライダが、バッザーニに興味を示しているらしい。サンプとの契約は2005年まで残っており、バッザーニが今オフにジェノヴァを離れることはないだろうが、もし彼がセリエAでも高いレベルのプレーを披露できれば、ビッグクラブが放っておかないだろう。
明確なアイデアと豊富な経済力。この2つが、ガローネのサンプを形作っている重要な要素である。会長就任直後、ガローネはすぐに“セリエA昇格”という目標を打ち立て、それを達成した。新シーズンの目標は、A残留ということになるのだろうが、サンプフロントは密かに、ヨーロッパ・カップ戦への出場権獲得を視野に入れ始めているようである。 サンプを、「我々によって癒された狂気のバレリーナ」と呼んだガローネは、4月29日、40年に渡って務めてきた『ERG』の社長の座を、息子のエドアルドに譲った。これで彼は、サンプドリアのために働く時間を増やしたというわけだ。現在のガローネの頭の中は、自ら産み落とした新しいサンプをどのように育て上げていこうかという考えで一杯になっているはずである。 |
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