頂面で短気。しかし、サッカーは恐ろしく上手い。底知れない力と洗練された技術、そして鋭い得点感覚。クリスティアン・ヴィエリには、サッカー選手にとって必要な能力のすべてが備わっている。高度なテクニックを誇った名選手ボブ・ヴィエリが父なのだから、それも当然だ。

 オーストラリアでプレーしていた父の影響で、クリスティアンも南半球でボールを蹴り始めた。最初にプレーしたチームはマルコーニ。イタリア系移民で構成されたチームである。“ボボ”は、その後、さらなる飛躍を求めた。親元を離れイタリアに帰郷し、父方の祖父エンゾの家に身を寄せながらその足技に磨きをかけた。

 “サッカー流浪人”。それが、その後のヴィエリにつけられた愛称である。89年、C1のプラートに入団したボボは、その後、トリノ、ピサ、ラヴェンナ、ヴェネツィア、アタランタ、ユヴェントス、アトレティコ・マドリー、ラツィオと、ほぼ毎シーズンのようにチームを変えた。それはまさに名声と栄光と高い評価を求めた長い長い巡礼の旅であった。

 その後、99年の夏にインテルに入団。今シーズンはインテルで5シーズン目だが、これは巡礼者ヴィエリにとって記録的なことだ。もっとも、インテルのヴィエリは今シーズンが見納めになるだろう。どうやら、度重なるインテルでの敗北が、彼を「もはやインテルでは優勝できない」という気持ちにさせているようだ。ただ、ミラノでの生活に限れば、ボボは十分に満足している。引退後を考えて、母親のナタリーと共同でミラノでビジネスも始めているほどだ。

 今シーズンがインテルのヴィエリの最後になる。こう言える最大の理由は、インテリスタとの関係が修復不可能な状態にまで悪化していることだ。現在、インテリスタの間では、ヴィエリの今後を巡って意見が真っ二つに分かれている。「今後も彼を中心に立て直しを図るべきだ」と主張するファンがいる一方で、「ボボを放出し、将来性のあるアドリアーノ(現在、パルマと共同保有)やマーティンスといった若手中心のFW陣で戦っていくべきだ」と主張する者もいるのである。現在のボボとティフォージの関係はかなり冷え切っている。今のヴィエリは、ゴールしても全く喜ばず、第10節レッジーナ戦ではブーイングに皮肉交じりの拍手で応酬したほどだ。チャンピオンズリーグで敗退した今、現状を打破できる唯一の方法は、ヴィエリとインテルが、ファンの納得するような結果、すなわちスクデット獲得を果たすことだけである。

 いずれにせよ、インテルにはピッチ外の問題が多すぎる。すでに30歳を迎え、くるぶしに古傷を持つボボが焦りを感じるのも当然のことだ。今のボボは、ファンとの確執以外にも、もう一つ大きな問題を抱えている。現在の彼は、必ずしも万全なフィジカル・コンディションを保っているとは言えないのだ。9月10日のセルビア・モンテネグロ戦で負ったケガにより、ヴィエリは3週間の欠場と苦しいリハビリを経験した。エクトル・クーペルの解任、ファンからの抵抗、ゴール前での信じられないミス。こうした忌まわしい事件はすべて、その数週間のうちに起こった。スペクタクルなサッカーを標榜する新監督アルベルト・ザッケローニが徐々に悪い流れを断ち切っているが、インテルのスクデット獲得は今シーズンも難しいと言わざるを得ない。

 再び敗者に甘んじることになれば、シーズン終了後、ボボが国外へと旅立つ可能性さえある。昨夏、チェルシーのロマン・アブラモヴィッチ会長から破格のオファーを受けながらインテル残留を選択したが、ロンドン行きの扉は再び開き始めたと言ってもいいだろう。もっとも、今のボボが本当に夢見ているのは、97年から2年間プレーしたスペインへの復帰かもしれない。セリエAよりもストレスが少なく自由にプレーできるスペインは、彼にとって理想的な環境なのである。現在、バルセローナが彼に触手を伸ばしているというが、おそらく親友のロナウドは、レアル・マドリー入りを願っているはずだ。

 今シーズンのヴィエリには、スクデット以外にも重要な目標がある。それは、6月にポルトガルで行われるEURO2004の舞台にアッズーリの一員として立つこと。狙うは、もちろん優勝である。もし今シーズンもインテルでスクデットを獲得できなければ、ボボはより一層代表でのタイトルを渇望するはずだ。
  文●アレッサンドロ・ボッチ
Text by Alessandro BOCCI
写真●マウリツィオ・ボルサーリ
Photo by Maurizio BORSARI