| ネドヴェドが多くの魅力を持つプレーヤーであることは冒頭でも述べたが、中でも最大の武器と言えるのはドリブルシュートだ。ドリブルからシュートを放つ場合、多くの選手は身体のバランスを崩してしまう。しかし、ネドヴェドには身体の“ブレ”が全くない。つまり、バランスを失うことなく、ドリブルからのシュートにすべてのパワーを乗せることができるのである。力強く、しかもしっかりとコントロールされたネドヴェドのシュートが相手のGKをひざまずかせるシーンは、セリエAを愛する我々にとって非常に見慣れた一幕である。 FWとしての“エゴイズム”(自己中心主義)とMFとしての“アルトゥルイズム”(愛他主義)。この両面を持ち合わせたネドヴェドのプレースタイルを簡潔に物語る数字が2つある。それはゴール数とアシスト数である。昨シーズン、彼はカンピオナートで9ゴールを記録、そして同数の9つのアシストを記録している。昨シーズンのプレーが特別だったと言うわけではない。イタリアにやってきてから昨シーズン終了時までの通算ゴール数が46、そして通算アシスト数が35。このほぼ同じゴール数とアシスト数こそ、ネドヴェドの真骨頂である。 ネドヴェドは現状を冷静に分析し、成長を遂げるために自己批判することでも有名である。例えば、ユーヴェに加入した当初の興味深いエピソードがある。ユーヴェに移ってから数カ月、ネドヴェドは大きな悩みを抱えていた。ユーヴェが目指す組織的なプレーになかなか馴染むことができないでいたのだ。ネドヴェドの不調に気づいたマスメディアは、彼の欠陥や欠点を紙面で論じ始めた。一方で、頼まれもしないのにネドヴェドを弁護して、彼の機嫌を窺う言動に出る者もいた。しかし、そんな状況にあって、ネドヴェドは自ら堂々と自己批判をしたのである。 「今の自分のプレーには全然満足していない。ユーヴェに入ってから、全く良いプレーができていないと思うよ。なんらかの方法で、立て直しを図らなければいけないね。僕を獲得するために大金を投資してくれた人のためにも、一日も早く、自分自身の本来のレベルに戻らなくてはならないと痛感しているよ」 多くの選手は不調の原因を誰か他人のせいにしてしまう。だが、ネドヴェドにはすべての責任を自分で背負い込む強さがある。つまり、ネドヴェドはチームに貢献しようという責任感が誰よりも強い選手なのだ。これほど生真面目なカンピオーネは後にも先にもネドヴェド以外には現れないかもしれない。
ところで、ネドヴェドがヨーロッパで最高のサッカー選手だという評価は正しいのだろうか? この問いに対し、即答することはできない。ただし、最も技のある選手かどうか、あるいは最も力のある選手かどうかは別にして、様々な魅力を持つ彼が新たなサッカーの象徴的存在であることは間違いなさそうだ。すでに述べたとおり、攻守のバランスに長けた彼こそ現代サッカーにおける理想の選手なのだから。 彼はラツィオ在籍時の5年間で、スクデット1回、2位1回、3位1回と見事な成績を残している。ユヴェントスに移ってからの2年間では、2度のスクデット獲得に貢献。さらには、自他ともに認めるリーダーとして祖国のチェコ代表をヨーロッパ屈指の強豪国に成長させてもいる。昨シーズンは、チャンピオンズリーグのタイトルも手にできたはずだが、自らが欠場したために、その栄光を享受することはできなかった。「マンチェスターのピッチにネドヴェドがいれば……」とは、多くの評論家が論ずるところである。それだけ、ユーヴェにおける彼の比重が大きいということだろう。これほどまでの存在感を示し続けるネドヴェドにバロン・ドールが授与されたのは、ある意味では当然の帰結だったのである。 プロフィールを見て、我々は改めて彼が30歳を越えている事実に驚く。ピッチ上を縦横無尽に走り回るその姿は、30歳を過ぎた“老兵”のものにはとても思えない。今こそ、パヴェル・ネドヴェドに乾杯しよう! ブロンドの髪をなびかせ疾走する永遠の青年、パヴェル・ネドヴェドに乾杯しよう! |
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