| |
![]() |
| トレードマークのキャップと、オーバーアクションで、すっかりお馴染となったコズミ |
| 文●マッテオ・グランディ text by Matteo GRANDI 写真●兼子愼一郎、パオロ・ヌッチ、グエリン・スポルティーヴォ photo by Shin-ichiro KANEKO/Paolo NUCCI/GUERIN SPORTIVO |
|||||||||
ペルージャの快進撃は、新たなチーム経営への方向づけという面でも大きな意味を持っている。「チームを強くするには巨額の出資が不可欠だ」という、セリエAの定義に全く相反した哲学でチーム作りを行っているという点は見過ごせない。ヴィエリやレコーバに数十億円を費やしたインテルが、さらに、ルイ・コスタ、ヌーノ・ゴメスに大金を投資したフィオレンティーナがペルージャの後塵を拝している事実を考えれば、「狂気に満ちた大金をつぎ込みさえすれば、いいチームが作れるんだ。新たなタレントを自分自身で発掘しよう、なんて考え方は無意味だ」というセリエAの時流に背を向けた、ルチアーノ・ガウッチの戦略が正しかったことを認めざるを得ないだろう。 下部リーグ(セリエB、セリエC)に人材を求めるのは、往々にして大きなリスクを伴うものである。時として、それは生か死を賭けた“博打”にもなり得る。それが、博打にならないのは、監督が下部リーグを熟知した人間であるという場合だけだろう。その点で言えば、セルセ・コズミは、まさに下部リーグで“修行”をした男である。いや、下部リーグしか知らなかった男である。その点では、ガウッチはまさに最適の人物を監督に据えたとも言えるだろう。 ペルージャは素晴らしいサッカーをしている。選手は労を惜しまず、チームの利益のためにプレーしている。ここでは“自己犠牲”は当たり前の話。しかし、無名の選手の集まりだったはずのペルージャにも“スター”が生まれつつある。ジョヴァンニ・トラパットーニの視線の先に2人のペルジーニがいることは、もはや周知の事実である。マルコ・マテラッツィとファビオ・リヴェラーニである。リヴェラーニは5人で構成するMFの中央でプレーメイクを司る男。昨シーズンまではセリエCのヴィテルベーゼでプレーしていた全くの無名選手であった。 今シーズンのペルージャには、開幕時、そこそこに名の知られた選手が2人いた。DFのゼ・マリアとFWのルカ・サウダーティである。だが、この2人が好調ペルージャの絶対的要因というわけではない。ペルージャの強さの秘訣は、チームとしてのまとまりにあるのだ。選手は全員、“狂ったかのように”走り回り、空いたスペースがあれば、ただちにそこを埋め、ピンチに陥ったチームメイトがいれば、ただちに手を差し伸べる。チームワーク、全員サッカーこそ、彼らの好成績の最大要因なのである。そこには、プリマ・ドンナ(主役)は存在しない。だからこそ、グリフォーニ(ペルージャ・サポーター)や、フロント陣が密かにヨーロッパカップを夢見ていたとしても、コズミ、および選手たちは現実的な望み、すなわちセリエA残留を着実に見据えているのである。 「もう金は使いたくない……」という会長の下で監督をやってみたい、なんて考える人間は多くはいないはず。だが、コズミはこれを“人生における最大のチャンス”と見なした。このチャンスを逃せば、今後セリエAで指揮を執るなんてことは一生あり得ないだろうと考えたコズミは、あえてガウッチの挑戦に応じたのだ。もっとも、コズミには、例えセリエAで失敗しても“失うものはない”という意識があったことも確かである。セリエCから2段階特進でセリエAへ……。そして、開幕からの快進撃。セリエA、セリエBを通じて最も薄給の監督(年俸1億8000万リラ=約900万円)は、ほんの数カ月間でイタリアサッカー界で最も有名な監督の1人になったのだ。ペルージャの町ではチームの好成績に首をかしげつつ、人々はこう口にしている。 「これはコズミを監督に据えたルチアーノ・ガウッチの手柄なのか? それとも、コズミが銅を金に変える魔術を持っていたからなのか?」。その答を導くのは難しい。特に公平な答をペルージャ市民から引き出すのは難しいことである。何故なら、ペルージャの町中がコズミに好意的であるからだ。ペルージャ生まれでペルージャのウルトラ出身……その上ペルージャのチームに奇跡をもたらしたとなれば、コズミに反感を抱くはずがない。一方、ガウッチはローマ人。ペルージャ市民にとっては“よそ者”なのだ。ペルージャの奇跡をガウッチの手柄だなどとは、仮にそう思っていても決して口には出さないだろう。それに、昨夏起こったペルージャ市民とルチアーノ・ガウッチの対立は、もはや修復不可能な状態。辛うじて、息子のアレッサンドロを通じてペルージャとの関係を保ってはいるが、「ルチアーノの心、もはやペルージャにあらず」という事実は否定できない。 |
|||||||||
| 1 / 2 |