本当にガウッチは
  ペルージャを手放すのか?  
 

「口は災いの元」……。選手、監督に対する暴言が日常茶飯事だったルチアーノは、昨夏、ある親善試合に負けた後、何とサポーターに対し「お前たちは所詮セリエCのサポーターだ!」と、暴言を放ったのである。サポーターの怒りは簡単には収まるはずがない。仲直りの唯一の方法はルチアーノがサポーターに詫びを入れること。だが、ルチアーノのしたたかさはセリエAのオーナーでも1、2を争う。詫びを入れるどころか、彼はクラブを売り払おうという気配すら見せているのである。

ガウッチとペルージャの“離婚話”は現実味を帯びている。彼はこの数カ月、スタディオ・レナート・クーリに姿を現さない。ガウッチはすでにシチリア島のカターニア(現在セリエC1)を買収し、カターニアとペルージャの今後の成り行きの中で、自分の方針を定めるという物見気配に入っているのである。カターニアがセリエB昇格、さらにセリエA昇格となれば、ガウッチがペルージャを売り払い、すべての資産をカターニアに注ぐことは間違いないところである。もはや、ガウッチ・ファミリーのカターニア行きは時間の問題と考えるのも無理のないところだ。ただし、現状では、絶好調ペルージャと、いまだ先の見えないカターニアを前にしては“待つ”しかないのである。

ペルージャの買収に動いているグループもある。地元ウンブリア州の実業家マンリコ・カルツォーニをリーダーとする企業家グループである。カルツォーニはあの“PRADA”のグループでカシミア部門の中軸を成す企業のオーナー、ウンブリアの繊維業界の名士である。カルツォーニはだいぶ前から、ルチアーノ・ガウッチに買収額を提示しているが、“様子見”に入っているガウッチは、ひとまずは、法外な金額を要求してこれを拒否している。ここにきて、カルツォーニのトーンも下がりつつあるが、だからといって、ペルージャ買収の夢を捨て去ったというわけではない。互いが互いの手の内の探り合いをしていると言ったほうがいいのかもしれない。

相変わらず話題の絶えないルチアーノガウッチ。
本当にペルージャを手放すつもりなのか?

カルツォーニのプロジェクトで大きな使命を果たすとされているのはイラーリオ・カスタニェールである。かつてペルージャに黄金時代(78−79シーズン、セリエA2位)を築き上げた“ペルージャ市民”のカスタニェールが新ペルージャの会長に就任するシナリオが作られているのである。要するに、ローマの人間からペルージャを取り戻し、「ウンブリア人によるウンブリア人のためのペルージャを作り上げる」という思想を垣間見ることができるのだ。もっとも、カスタニェールを担ぎ出すということに関しては、カルツォーニも慎重にならざるを得ない。ルチアーノ・ガウッチとカスタニェールは誰もが知る犬猿の間柄。カスタニェールが監督を務めた2年前、何度となく、2人の間に舌戦が繰り広げられたことは有名な話だ。さらに、つい最近まで、監督解任時における給料の未払いを巡って裁判が続けられたという事実を考慮すれば、2人が“いい印象”を持っているとは決して言えないはずである。もし、カスタニェールがペルージャの会長に就任するなんてことをガウッチが知れば、その態度を硬化させるはずである。すべての交渉が終わるまで、できればカスタニェールはその影すら見せないほうが賢明だとは思うのだが、地元のマスメディアはカスタニェール会長就任を前提にしたカルツォーニのペルージャ買収劇と報道しているし、グリフォーニもカスタニェールのペルージャ復帰を心待ちにしているのである。

グリフォーニにとって、カスタニェールはかつての華やかなりし頃のペルージャの思い出であり、また、“ナカタ復帰”への希望のかけ橋でもあるのだ。ペルージャの町は、今でもナカタが戻ってくることを心から望んでいる。ナカタの野望がもっとはるかに高いところにあることを知りつつも、“日本人ペルジーノ”が“故郷”に戻ってくれるのを待ち望んでいるのだ。そして、カスタニェールこそ、ナカタの“帰郷”を可能にする男だと信じている。ローマがアントニオ・カッサーノを獲得、センシ会長が「ナカタの未来は彼自身が決めること」と言い放った今こそ、もし、カスタニェールが動けば、ナカタがビアンコロッソのシャツを再び身に付けることもあり得ると信じる人も結構いるのである。

ナカタの去就同様に、ガウッチの去就も今のところ推測は難しい。彼が、いつ、どのような方法でペルージャを売却するのか、それとも、当分はペルージャのオーナーとして高みの見物と洒落込むのか……予測は難しいところである。

現在、ルチアーノ・ガウッチはチームの売却はひとまず後回しにして、選手の売却に精を出している。真っ先に売りに出したのがチームの軸であるマルコ・マテラッツィである。インテルのモラッティ会長との間ですでに金銭的合意に達しており、移籍金は何と200億リラ(約12億円)と、DFとしては破格の金額である。彼の懐には、またしても大金が入り込むのである。そして、現在、“ペルージャの奇跡”を実現した多くの選手の名前が移籍リストに載っていると言われている。「主力選手を軒並み売却して大金を手にしてから、ペルージャを売り払おうとしているのではないか」と、ペルージャ市民が勘ぐるのも無理もない。これまでのガウッチの言動からすると、“やりかねない”ことである。だが、「選手を安く仕入れて、高く売る」という市場戦略でこれまで長年にわたり儲けさせてもらったペルージャを手放すことは、ビジネスの観点だけで見れば、決してガウッチにとって得策ではないと思うのだが……。
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