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カ ルチョメルカートの一寸先は闇、と言うべきなのか。イタリアの移籍市場では、時として全く予期せぬことが起こる。この数週間、レアル・マドリーがアドリアーノ獲りを積極的に進めていたことは、サッカーファンなら誰でも知っていた。レアルはアドリアーノを獲得できるなら、現金3000万ユーロ(約40億5000万円)にワルテル・サムエルとサンティアゴ・ソラーリを付けてもいいという条件まで提示していたのである。そして、このレアルのオファーには、インテルのマッシモ・モラッティ・オーナーも少なからず心を揺さぶられていた。
コッパイタリア決勝戦、アドリアーノは1人でローマを粉砕し、インテルに久しぶりのタイトルをプレゼントした。そして、この時、モラッティの心は固まった。アドリアーノを手元に残し、その代わりにクリスティアン・ヴィエリを手放す覚悟を決めたのである。 金満インテルにとっても、ヴィエリへの1200万ユーロ(約16億2000万円)という年俸は大きな負担だった。モラッティは、すでにロベルト・マンチーニ監督の構想から外れているヴィエリへの出費を少しでも軽減させたかったのだ。1200万ユーロの年俸を払うより、900万ユーロ(約12億2000万円)の違約金を支払ってヴィエリを自由契約にするほうが得策だと考えたのである。モラッティとしては、このまま高額年俸を払った上でヴィエリをベンチに置き、チーム内の摩擦を引き起こすより、彼の保有権を手放して300万ユーロ(約4億円)を節約することを選んだのだ。こうして、6シーズンで143ゴールを記録したストライカーは、インテルにビッグタイトルをもたらすことなく、ただ多くの論争を引き起こしただけでチームを離れることになったのである。 彼のインテル退団が決まった瞬間、イタリア各所でヴィエリ獲得に向けた動きが始まった。当初は誰もが彼のユヴェントス入りを口にし、ヴィエリ自身もかつてスクデットを手にしたクラブでもう一度プレーしたいと思い始めていたようだ。そして、ユーヴェのGMルチアーノ・モッジがヴィエリの代理人ベルティと会談を持つと伝えられた時、誰もが「これで決まりだ」と思ったに違いない。だが、この会談で話題に上ったのは別の選手だったという。それが本当かどうか定かではないが、モッジがヴィエリに興味を持っていなかったことだけは確かだ。一方、ユーヴェ以上にヴィエリ獲得に興味を示したクラブがあった。かつて彼がプレーしていたラツィオの宿敵、ローマである。緊縮財政を余儀なくされているローマにとって、自由契約で移籍金ゼロのヴィエリは魅力だったのだ。だが、ローマは大きな問題を抱えていた。昨夏、フィリップ・メクセスをオセールから獲得した際、移籍金の支払いに不正があったため、FIFAから選手の獲得を2006年1月まで禁じられていたのである。 これで、ヴィエリに残された可能性は、奇しくも彼自身がかなり前から希望していたと言われるミランでのプレーとなった。そして、移籍金ゼロの2年契約、年俸は300万ユーロ(約4億円)で、ヴィエリは大親友のピッポ・インザーギ、パオロ・マルディーニ(彼とは共同で“Sweet Years”というファッションブランドを立ち上げている)、ジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾが待つミランへの入団を決めたのである。同じミラノという町への移籍であるため、引っ越しに煩わされることもない。アッピアーノ・ジェンティーレで失った信頼を取り戻すため、ミラネッロでひたすら努力するだけでいいのだ。 ヴィエリのミラン入りを聞いたモラッティは、報道陣に対して次のようなコメントを残した。「彼に裏切られたとは思っていない。ミランに入ることは半ば予想していたことだったし、彼が前からミランでのプレーを希望していたことも知っていたからね。ミランの攻撃陣が怖いかって? いや、怖くはない。我々にはアドリアーノもいるし、マーティンスもいる。ミラン以上の攻撃陣だと思っているよ」 当初、ミラネッロはさほどヴィエリに対して好意的ではなかった。それも当然である。ライバルチームのストライカーをすぐに受け入れることは考えにくい。インテルからミランに移ったヴィエリの立場は実に微妙なのである。ミラニスタからは罵声を浴びせられ、インテリスタからは「裏切り者!」と罵られる。酒に酔ったインテリスタが、ヴィエリの経営するレストラン“BOBO32”の窓ガラスを石で割るという事件まで起こったのだ。それでもヴィエリは報道陣に対し、「おれは幸せだぜ。これで念願のビッグタイトル獲得に近づいたんだからな」と語っている。 ヴィエリはミラノの町を1つのチェントロから、もう1つのチェントロへと横断した。もっとも、インテルからミランに移った選手は多い。中でも歴史に残るのは、カルチョ史上最高のストライカーと呼ばれているジュゼッペ・メアッツァである。ヴィエリ獲得という歴史的事実を目にしたミランのGMアリエド・ブライダは次のように語った。「結局、どのようにしてヴィエリ獲得に至ったのか、説明するのは困難だ。紆余曲折があった末の獲得だったからね。ただ、今言えることは、ミランもヴィエリ本人も喜びに満ちているということだ」 ヴィエリがインテルのバンディエラだったという事実が、ミランに不必要なトラブルを引き起こす可能性はないのか、という質問に対して、ブライダはこう話した。「心配する必要はないだろう。ヴィエリのようなケースは初めてではない。あのメアッツァだって、インテルからミランに移籍したんだからね」
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