本誌記事 WebCALCiO 2002

数年前から、ユースとジュニアユースの大会を見に行くたびに感じることがある。それは、「イタリアの若い選手たちはマンツーマンで守れなくなっている」ということだ。イタリアは執拗なまでのマンマークで世界を制した国である。世界最高と言われたイタリアのディフェンスに、何が起こっているのだろうか。

ユース年代のテクニック向上を目指して活動しているFIGC(イタリアサッカー連盟)テクニック部門の担当者、アントニオ・アッコンチャは、「どこのクラブでも構わない。下部組織の練習を見れば一目瞭然だ」と語る。「ほとんどのクラブの下部組織の練習は、最初にウォームアップと簡単なパス練習をして、その後はずっと戦術練習をするんだ。駆け引きを含んだ“個人的戦術”や、そのために必要な個人技の練習などは日常的に行われていない」

ここで言う“個人的戦術”とは、相手FWの動きを封じ込めるために必要なすべての動きを意味する。マークする相手とどのくらいの距離を保つべきか、相手にシュートやパスをさせないためにどのように体を寄せるべきか、どのタイミングでインターセプトを狙うべきか……そうした動きのすべてを指す言葉である。アッコンチャは、下部組織の練習のメニューからこうした“個人的戦術”が消えてしまった現状を嘆いているのだ。

識者の多くが、若い選手たちの育成方法に問題があると指摘している

イタリア代表とインテルで活躍し、この20年間でイタリアが生んだ最高のストッパーと言われているリッカルド・フェーリ。彼も、最近の下部組織の練習方法に疑問を呈している。「私の3人の息子たちは、全員がサッカーをやっている。子供たちの練習を見て気がつくのは、監督があまりにも早急に“組織的な動き”を子供たちに求めていることだよ。監督は子供たちに、ダイアゴナルな動きや、ラインの押し上げを教え込もうとするんだ。このような練習ばかりでは、基礎技術を学ぶことができない。私はそう危惧しているんだ。DFを志す子供たちには、ペナルティーエリア内で自分が取るべきポジションや、ボールと相手FWとの距離感など、もっと基本的な技術を教えるべきだと思っているんだが……」

現役時代のジェンティーレは、あのマラドーナにも一切仕事をさせない《マンマークの象徴》だった

フェーリの意見に同意するのは、イタリア式マンツーマン・ディフェンスの象徴とも呼ばれた選手であり、現在はU−21イタリア代表監督を務めるクラウディオ・ジェンティーレである。「最近の若者は、妄想に取り付かれたかのようにゴール前のスペースを埋めることに気を配っている。しかし、すべての前提となる基本的概念は、相手FWをつかまえることなんだ。DFの3人がそれぞれ自分の担当するゾーンで立ち止まり、その間を相手FWが駆け抜けてゴールを決めるなんてシーンをしばしば見るんだ。DFが相手FWよりスペースを見る傾向にあるなんて、本末転倒だよ。ペナルティーエリア内にDFが揃っているのに、相手FWの侵入を許してしまう。私が現役の頃は、相手FWはなかなかエリア内に入ることができなかったものさ」

かつてイタリア代表の監督を務め、現在はコヴェルチャーノの技術部門の総責任者を務めるアゼリオ・ヴィチーニは言う。「最近の若者は密着マークができない。相手FWを4メートルも離した上、その選手にゴールを決められるなんてことはおれたちの時代にはなかったことだ」。彼は続ける。「マンマークを行うには最大限の集中力が必要だ。今の選手は、少し危ない状況になるとすぐに戦術的ファールで逃げようとする。本来、ファウルで逃げるのは最後の方法であるべきだよ。こんなことをしているから、集中力を保てなくなるんだ」とゾーン万能主義に警鐘を鳴らしている。

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