|
|
今シーズン終了後には、アレックスにとって3度目となるかもしれないワールドカップが控えている。代表での彼は未だに完全燃焼し切れていない。96年、00年のEURO、98年、02年のW杯と、アッズーリでの彼は常に熾烈なポジション争いに晒されてきた。昔はロベルト・バッジョと、そしてバッジョが去った後はトッティがライバルとなった。そのような状況下、アレックスは代表での貴重な時間の多くを無駄にするしかなかったのである。 EURO2000のロッテルダムでのフランスとの決勝戦。アレックスは相手GKファビアン・バルテズと一対一になりながらもシュートを外し、敗戦の戦犯としてマスコミから厳しい批判を浴びせられた。また、ファンの苛立ちがアレックスに感染した時期もあった。時は瞬く間に過ぎ去り、アレックスはユーヴェの一員として栄光の瞬間を体験し、多くのタイトルを手にした。だが、アッズーリでは今まで一度も時の波に乗ることができないでいるのだ。 おそらく代表監督のリッピは、ドイツに5人、あるいは6人のFWを連れて行くはずである。トッティ、アルベルト・ジラルディーノ、ルーカ・トーニの3人は当確と見ていい。あとは、センターフォワードタイプのヴィンチェンツォ・イアクインタ、クリスティアーノ・ルカレッリ、クリスティアン・ヴィエリのうち1人をメンバーに加えてくるはず。残りは、セカンドアタッカーの控えである。アレックスがメンバーに滑り込めるとしたらこの枠しかない。最大のライバルは、この冬、スペインに新天地を求めたカッサーノ。この2人の争いは間違いなく熾烈なものになるはずだ。移籍したばかりの減量が必要なストライカーと、ユーヴェでサブの地位に甘んじているFW。これからの数カ月間、神経をすり減らすようなサバイバル戦が繰り広げられるに違いない。ところで、リッピ監督がこの2人を同時にメンバー入りさせることはないだろうか。いや、アッズーリの現状を見る限り、その可能性は低いと見るべきだろう。カッサーノは若く破天荒なプレーをする選手で、一方のデル・ピエロはどう振る舞ったらシステムの食い物にされないかを熟知する成熟した選手である。レアル・マドリーのレギュラー候補とユーヴェの控え。たとえサブであっても、アレックスがユーヴェで担う役割は大きい。だが、彼が控え選手であること。それだけは動かし難い事実なのである。 かつてデル・ピエロはルネッサンスの画家“ピントゥリッキオ”というニックネームで呼ばれていた。以前の彼は、たった“一筆”のパスでピッチ上に素晴らしい曲線を描けるアーティストだったのである。ヒールキックでの得点、ゴール前でこぼれたボールに相手DFよりも一歩早く到達してゴールに押し込むような得点、俗に言う“デル・ピエロ・ゾーン”からのカーブがかった芸術的な得点、ドリブル突破から、FKやPKで……アレックスはユーヴェで186ものゴールを積み上げてきた。そして、彼のゴール伝説はこれからも続いていく。 現在のデル・ピエロは、間違いなくユーヴェの“牽引役”である。ただし、周囲に物議を醸し出すような強烈な個性を持つリーダーではない。彼は愚痴をこぼすことなく、監督から命じられたポジションでのプレーを黙々とこなしている。怒声や喧騒が渦巻くサッカー界で、あたかも両親からの言いつけを健気に守り続ける少年のように、黙々と自分の仕事を全うしているのである。 好調時の彼は、周囲からのプレッシャーなど物ともせず、楽しみながら自分の義務を着実に果たしていく。デル・ピエロが他の選手と違うところは、自分の感情をコントロールする能力を身に付けていることだ。テクニック面では、完成の域に達していると言っても過言ではない。今度のドイツW杯では、すべての敵がアレックスに敬意を示すだろう。そして、すべてのチームメートが彼を“模範”と認めるに違いない。 彼が「従う」と言う時、それは仕方なく和平を結んでいることもあるだろう。いや、もしかしたらそれよりももっと悪いもの、言ってみれば“偽りで恨みに満ちた休戦条約”なのかもしれない。長いサッカー人生の中で、彼は感情と野心をコントロールすることを学んだ。現在の彼は、そんな平和的な態度を無意識のうちにとってしまうようだ。 98年に大けがを負うまでの彼を支配していたのは、「自分はカンピオーネだ」という自負だった。しかし、けがを負ってからは体や心の古傷と折り合いをつけていくことを覚えたのである。 今年の1月8日、記録のかかった第18節のパレルモ戦で、カペッロ監督はアレックスを4分間しかプレーさせなかった。多くの人々が“記録の夜”になることを願っていたのに、カペッロはその願いを無視したのである。しかし、そういう指揮官の冷遇があるからこそ、アレックスの闘志はさらに燃え上がるのだろう。自分をベンチへと追いやる指揮官に後悔の念を抱かせるまで、彼は飽くなき戦いを続けるはずだ。カペッロの非情な采配によって、出場の機会が限られているアレックス。それが結果的に、彼のサッカー選手としての寿命を延ばすことになるのかもしれない。 |
| 3 / 4 |