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昨夏、デル・ピエロは厳しいシーズンを迎えると考えられていた。開幕当初、カペッロの構想にあった2トップのレギュラーはダヴィッド・トレゼゲとズラタン・イブラヒモヴィッチで、控えFWにはレギュラーを目指す選手の長蛇の列があった。アドリアン・ムトゥの加入でデル・ピエロの立場は昨シーズンより悪くなっていた。一時は、控えのグループからも名前を抹消されかねない事態に陥っていたのだ。カペッロはネームバリューや格を尊重するタイプの監督ではない。彼は“ユヴェントスの神話、デル・ピエロ”すら信じようとはしなかったのだ。まじめで、練習熱心で、髪の毛からつま先までユヴェンティーノであるデル・ピエロはティフォージから最も愛されている選手である。デル・ピエロを信奉するユヴェンティーノは、彼を冷遇するカペッロに反旗を翻した。クルヴァにはカペッロを非難する横断幕が溢れ、ファンはアレックスを称える歌を繰り返した。さらに、ユーヴェの公式ホームページには抗議のメールが殺到したのである。それでも、カペッロは自分の信念を曲げようとはしなかった。カンピオナート序盤戦、カペッロはデル・ピエロにわずかな出場機会しか与えなかった。
チームリーダーを自認する選手がこれほど軽視されれば、キレてしまってもおかしくない。ティフォージの支持をバックに、カペッロと正面から対立することも可能だったはずだ。だが、デル・ピエロはそんなタイプの男ではない。彼はユーヴェにとってマイナスとなる行為を避け、“カペッロの挑戦”を真っ向から受けて立つことを選んだのである。 カペッロは妥協を知らない男だ。彼は常に、「その時点でチームに最も役立つ選手を起用する」という考えを貫いた。ファンやマスコミが2人の対立を煽っていたにもかかわらず、デル・ピエロのコンディションを冷静に見極めて、良いと思ったら迷わずピッチに送り出した点で、カペッロはやはり名監督と呼ぶにふさわしかった。デル・ピエロの出番は少しずつ増えていき、いつの間にか、完全に“チームの象徴”としての地位を取り戻したのである。彼の驚異的なパフォーマンスは、出場したゲームが少なかったからこそ可能だったのかもしれない。いずれにしても、彼はユーヴェにとって貴重なゴールを量産し、チームに不可欠な選手となった。 ただし、ユーヴェにとって不運だったのは、デル・ピエロが真の意味で“チームに不可欠な選手”となってしまったことだ。つまり、チャンピオンズリーグ準々決勝のアーセナル戦のことである。筋肉を痛めたデル・ピエロを欠いたビアンコネーロは、いつものユーヴェではなかった。準々決勝の相手がアーセナルだと知った時に危機を感じた人は少なかったはずだ。しかし、デル・ピエロが欠場せざるを得ないと判明した時点で、多くのユヴェンティーノの頭の中には“予想外の敗退”という不安が生まれていたはずである。実際、デル・ピエロのいないユーヴェは全く機能しなかった。プレーに精彩を欠いただけでなく、メンタル面でもいつにない不安定さを露呈した。結局、誰もがデル・ピエロ不在を嘆くことになったのである。
インザーギの状況はデル・ピエロよりさらに悲惨だった。最初は、小さな骨片を取り除くだけの簡単な手術だったはずが、いつの間にか選手生命が終わったと感じさせるような重傷になっていたのだ。リハビリと検査、手術を繰り返す日々の中で、インザーギは人々の記憶から忘れ去られたかのようだった。唯一の救いは、ミランが決して彼を見捨てようとはしなかったことである。しかし、ミランの首脳陣はピッポの復帰を心から待ち望むと同時に、それが簡単ではないという危機意識もしっかり持っていた。だからこそ、彼に代わるべきストライカーの獲得に動いたのである。そしてシーズン開幕前、“ピッポの後継者”と呼ばれたアルベルト・ジラルディーノと、ピッポの親友であるボボ・ヴィエリがロッソネーロのユニフォームを手にした。2人のストライカーを獲得したことで、ピッポが復帰できなくてもミランの攻撃陣は機能することになったのである。 だが、インザーギは想像を絶するほどの強い精神力の持ち主だった。相手DFがひしめき合うペナルティーエリア内で爆発的な動きを見せるだけが彼の能力ではない。彼は苦境を跳ね返す粘り強さも備えていたのである。トレーニングを再開した頃にはまだ再発の不安があったが、ひとたびピッチに立てば、ピッポの頭の中にあった不安はゴールへの欲求にかき消された。ジラルディーノもヴィエリもいまいち波に乗れない状況で、カルロ・アンチェロッティ監督はピッポに信頼を寄せた。そして、ピッポは予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せ、指揮官の期待に応えたのである。 ここに、アレックスとピッポの新たな共通点が見つかった。デル・ピエロの欠場がユーヴェのチャンピオンズリーグ敗退を招いたのに対し、アンチェロッティが本能的に起用したピッポはリヨン戦で起死回生のゴールを決めた。2人ともチームにとって必要不可欠な選手である。しかし、チャンピオンズリーグ準々決勝の場では、正反対の形でその共通点が浮き彫りになったのだった。 |
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