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中盤でのディフェンスを語る場合、最も重要なのはディフェンスラインの前(中盤の底)でプレーする守備的MFの存在である。運動量豊富で、ボール奪取能力に優れたMFを中盤の底に置くことは、現代サッカーにおいて当然とも言うべき“約束事”である。しかし、今大会のアッズーリにおいて中盤の底を務めたのはピルロだった。彼は決して中盤の底で体を張るタイプではなく、守備能力には不安のある選手である。そう考えると、彼とトッティのような純粋なトップ下を同時に起用することは、常識ではまず考えられないことである。攻守のバランスを考えた場合、中盤のディフェンスがあまりにも無防備になるからだ。それでも、リッピ監督は中盤の守備力に問題があることを十分承知の上で、ボールポゼッションを高め、攻撃的なサッカーを展開するつもりだった。 こうして迎えたW杯開幕。ガットゥーゾとカモラネーシのコンディションが万全ではなかったため、ダイヤモンド型の両サイドMFはデ・ロッシとシモーネ・ペロッタが務めることになった。初戦のガーナ戦では、中盤の守備の問題が露呈することなく、アッズーリは見事なサッカーを展開して勝ち点3を手にした。 しかし、続くアメリカ戦で状況が変わる。レッドカードをもらったデ・ロッシが、4試合の出場停止処分を受けたのである。この結果、それ以降の試合でリッピは4−4−2の布陣を敷くようになった。ただし、この4ー4ー2は実際には4−4−1−1と呼ぶべきだろう。リッピは、トーニを1トップに固定し、その後ろにトッティをサポート役として据えたのだ。
![]() リッピ監督がW杯を戦うアッズーリの基本システムとして2年間かけて成熟させた4ー3ー1ー2(左)。トッティとピルロという稀代のカンピオーネを縦に並べ、どこからでも決定的なパスを2トップに供給できる攻撃的なシステムである。ただ、フィジカルに難のあるピルロを1ボランチに置くことで守備面に課題があった。結局、決勝トーナメント以降は4ー4ー1ー1(右)へとシステムを変更。攻守のバランスを重視するリッピの策は当たり、アッズーリは鉄壁のディフェンスを武器にW杯優勝を果たした ドイツW杯でのトッティは、決してトップコンディションではなかった。ボールをもらうために中盤の低い位置まで下がってくるのに、そこからゴール前まで進出するだけの運動量がなかっため、ゴールに近い位置でのプレーが少なくなっていたのである。トッティを1トップの背後に据えたのは、ゴールに近い位置で決定的な仕事をさせると同時に、予測のつかないプレーをするトッティを前線に置くことで相手守備陣にプレッシャーを与える目的があったのだろう。 一方、中盤は4人がほぼ横一列に並ぶようになった。カモラネーシがユーヴェと同じ純粋な右サイドMFとしてプレーし、左サイドには好調のペロッタが入った。そして、ガットゥーゾはピルロの隣にポジションを取り、闘争心溢れるプレーで中盤のフィルター役となった。ガットゥーゾのサポートにより、ピルロの長所はより表に出てくるようになった。単にディフェンスラインからボールを受けて前線にフィードするだけでなく、ピッチ中央で前を向いてボールを受ける状況が増えたのである。 ピルロに力強さを求めるのは酷である。スピードもあるとは言えない。彼がセリエAで「トレクアルティスタ失格」の烙印を押されたのはそのためだ。しかし、巧みなボールコントロールや、スペースを見つけるセンスには定評がある。それほど機転の利くタイプではないが、相手のプレッシャーを巧みなフェイントでかわすテクニックは一級品。頭を上げて前方を見据えながら多くのプレーをこなせるのも彼の長所の一つだ。
今のサッカー界でトレクアルティスタを務めようと思ったら、プレーにスピードがなければならない。そういう意味で、トッティは正真正銘のトレクアルティスタだと言える。一方、中盤の底でトレクアルティスタをマークする選手には、相手の俊敏な攻撃に反応するだけの筋肉と優れた反射神経が要求される。ところが、ピルロはそのどちらにも属さない選手だ。つまり、“既存の枠に収まらないタイプ”なのである。彼ほどの才能に恵まれながらも、ミランでレジスタとして大成するまでにかなりの時間を要したのは、そういう彼の才能が多くの監督に理解されなかったからだろう。 その一方で、デ・ロッシはトレクアルティスタとボランチの両方をこなせるタイプだと言える。前線に素早く飛び出したり、中盤で相手にプレッシャーをかけたり、空中戦で強さを発揮するのは、ピルロではなくデ・ロッシなのだ。攻撃を組み立てる仕事もできる。ロングパスの精度やファンタジーアではピルロに劣るものの、素早く正確なパスをフィードし、自らが積極的に動いて攻撃を組み立てていくタイプのMFだ。彼はいつもローマで見事にその役割を果たしている。デ・ロッシとピルロはプレースタイルこそ全く異なるが、どちらもプレーメーカーとして計算できる選手なのである。しかし、デ・ロッシを失ったことで、プレーメーカーとしての役割をこなせる選手はピルロだけになってしまった。このため、ピルロはほぼすべての試合でフル出場することになったのである。 |
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