|
|
|
|
![]() |
| 試合開始直後にトーニが決めた先制ゴール。ディ・ナターレのクロスに反応し、寄せてくるDFより一瞬早く、右足アウトサイドでシュートを放った |
![]() |
| FKからの混戦、正面に飛んだ弱々しいシュートをGKブッフォンがまさかのキャッチミス。ファーガソンに追し込まれ痛恨の失点 |
試合終了の瞬間、ロベルト・ドナドーニ監督は、ロスタイムに決勝ゴールを決めたクリスティアン・パヌッチと熱い抱擁を交わした。10年以上前に、ミランで一緒にプレーしたかつてのチームメートと、勝利の喜びを分かち合ったのである。
報道陣を前にして、ドナドーニは語った。「身体的に厳しいゲームになると予想していた。そして、予想どおりキツイ試合になった」。確かに、同点にされてからのイタリアは、30分間に渡り守勢に追いやられた。ハンプデン・パークの地元ファンの後押しもあって、スコットランドは世界王者イタリアを窮地に追いやったのだ。だが、この日のアッズーリには、世界を制したベルリンの夜を彷彿させるようなチームスピリットがあった。理解に苦しむジャッジを繰り返してアッズーリを苦しめた審判団(特に副審)に屈することなく戦い続ける、成熟したアッズーリがそこにあった。
![]() |
結果は、ロスタイムにパヌッチがヘディングで決勝ゴールを決める2−1の辛勝だった。だが、副審ガジャルドのミスがなければ、後半に苦しむことなく、“快適な勝利”を手にしていたはずである。この日のイタリアは開始早々に、またしてもルーカ・トーニのゴールでリードを奪った。“またしても”というのは、今年の3月28日、ナポリでのスコットランド戦でドッピエッタを記録したのがトーニ(イタリアが2−0で勝利)だからである。この試合でどうしても勝ち点3が必要だったスコットランドとしては、ペナルティエリア内でトーニをフリーにしてしまったのは痛恨のミスだった。ただ、ディフェンスの甘さが指摘されるとしても、イタリアの攻撃が鮮やかだったということは否定できない。ジャンルーカ・ザンブロッタのスローインによるボールを受けたアントニオ・ディ・ナターレが巧みなドリブルで左サイドを突破し、素早く入れたグラウンダーのクロスにトーニが相手DFの前で合わせるという鮮やかなゴールだった。
最高の立ち上がりを見せたアッズーリにとって、この日の、ハンプデン・パークには約5万人のタータン・アーミー(スコットランド応援団)以外に、副審という名の強敵がいた。前半、シュートのこぼれ球をゴール前に詰めていたディ・ナターレがゴールに流し込んだが、副審のガジャルドはこれをオフサイドと見なし無効にしたのだ。リプレーを見る限り、ディ・ナターレのポジションはオフサイドではなく、明らかに副審のミスジャッジである。この得点が認められていたら、後半にあれほど苦しむことはなかったのだ。そして、この副審はイタリアをさらに窮地に追いやる行為に出た。後半20分、今度はスコットランド側のFKをブッフォンが前にはじいたところを、“オフサイドポジション”にいたバリー・ファーガソンがゴールに押し込んだ。こちらは明らかにオフサイド。だが、ガジャルド副審はフラッグをセンターライン方向に向けて走った。結果的には、FKからの失点である。この日のアッズーリは、FKからの空中戦でほとんど競り負けていた。ファビオ・カンナヴァーロ、アンドレア・バルツァーリのセンターバックコンビが空中戦に弱いと断定するわけではないが、これは本大会に向けて大きな課題になったと言える。
![]() |
1−1となってから先、引き分けでもOKのイタリアに対し、スコットランドは勝たなくてはならない。自ずとイタリアが辛抱するという展開となった。そして、苦しみ抜いたイタリアに、副審の2つのミスの埋め合わせをするかのように、主審のゴンサーレスは、どう見てもファウルと思えないチャージに対して笛を吹いたのだ。ゴールライン近くからのFK……そのままボールをキープして時間稼ぎをしても良い状況で、アンドレア・ピルロは絶妙なセンタリングを上げた。そして、ファーサイドで相手選手より頭一つ高くジャンプしたパヌッチのヘディングシュートが、ファーサイドのネットに突き刺さったのだ。ローマでは若きシシーニョにポジションを奪われているベテラン右サイドバックが、かつて得意にしていた強烈なヘディングでアッズーリにEURO2008進出のゴールをもたらしたのである。
イタリアは苦しめられた分、大きな喜びを手にした。思えば、予選の初戦(ナポリ)でリトアニア相手に1−1の引き分けを演じた時、そして、サン・ドニでのフランス戦で1−3の完敗を喫した時、イタリアのマスメディアはアッズーリに批判の嵐を浴びせていたものだ。あの頃のことを思えば、今の状況は“奇跡”に近いもの。ドナドーニは本当に良い仕事をした。ドイツ・ワールドカップ優勝後、選手たちの心に生じた隙間を埋め、微妙な歯車のズレを見事に修正したのだ。
グラスゴーの雨の中、アッズーリはかつてなかったほど強固なディフェンス、連帯感溢れる中盤、そして、破壊力のあるFW陣を擁していることを立証したと言っていい。ピルロ、ジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾ、マッシモ・アンブロジーニのミラン・トリオが中盤をコントロールし、一度として相手FWに崩されることがなかった。両サイドのザンブロッタとパヌッチは、スコット・ブラウン、リー・マッカロフの勢いに悪戦苦闘を余儀なくされたが、フランス戦で決勝ゴールを決めてスコットランドの英雄になっているジェームス・マクファデンをカンナヴァーロとバルツァーリが完璧に封じ込んで事なきを得た。
そして、見事だったのがこの日の3トップだ。特にディ・ナターレは持ち前のスピードと、時に自陣のゴール前までボールを追う献身的な動きでイタリアにリズムを与えたのである。先制ゴールを演出した左からのクロスも絶妙、MVPと言っていい活躍でイタリアを勝利に導いた。そして、エースストライカーのトーニは、“得意”のスコットランド戦で最高のパフォーマンスを見せた。俊敏な動きから奪った先制ゴールも見事だったが、それ以上に、スコットランドDF陣相手に向き合った闘志を評価したい。彼だけが前線に残り、アッズーリの最終ラインが苦し紛れに前に出したボールを高い位置でキープ、ためを作ったプレーは高い評価に値する。
ドナドーニ監督は、「すごく良いゲームができた。おそらく、代表監督になってから最高のゲームだろう」と語った。そう、ドナドーニのイタリアはグラスゴーの地で、ベルリンでの勝利の感動を蘇らせてくれたのだ。そして今、2008年のヨーロッパ選手権に向けた新たな戦いが始まったのである。
![]() |
| 1 / 4 |