本誌記事 WebCALCiO 2002

私はその後、オランダのサッカークラブでの食生活も体験した。食に関する習慣では非常に頑固で、何も変えたがらないオランダ人だが、食事のたびに出てくるピーナッツ・バターの異常な量には驚いたものだ。何にでもピーナッツ・バターが入っているのだ。ジャムとピーナッツ・バター、チーズとピーナッツ・バター、サラミとピーナッツ・バター……。想像を絶するような食べ合わせの連続だった。

その前年、ベッペ・ドッセーナに加わってガーナ代表の指導に就いた経験があったので、イタリアとはかけ離れた食文化を受け入れる心の準備はできていたはずだった。そのガーナでの体験も心の準備をはるかに上回るほど私にとって衝撃的だった。試合を控えての食事は消化しやすい軽いものというのがヨーロッパの常識だが、モザンビークを相手の初の公式戦直前、食卓に運ばれたのは大量の魚のフライだった。その時の気温は36度で、湿度は限りなく100パーセントに近かったのに、である。普通だったら、そんなものを食べて走れば、心臓発作を起こすのがオチである。ところが、ガーナの選手たちは幸せそうにフライを食べ尽くし、ゲームではモザンビークをこてんぱんにやっつけたのだった。

イタリアサッカー連盟が実施した監督講習会で、現在ユヴェントスのベンチに座るクラウディオ・ラニエリが、外国で監督をやる場合の心得を語ったことがある。その中に、「自分のセオリーと食い違っていても、長年の伝統を持つ現地の食事習慣はなるべく受け入れるようにするべきだ」、との主張があった。当時バレンシアの監督を務めていたラニエリは、スペイン人選手に「バレンシア風パエージャを食べるな」と指示したことはない、と語っていた。ラニエリ監督は現地の食生活がプレーに悪影響をもたらさないと見極めた上で、そういう判断に至ったそうだ。

他にも分かりやすい例がある。 2005年のチャンピオンズリーグ決勝の2週間前、私はリヴァプールを訪問した。
現在ユヴェントスを率いるラニエリは、バレンシアやチェルシーなど、イタリア国外のトップリーグで監督を務めた経歴を持つ国際派。外国のクラブで監督をする際の心得として、自分のセオリーと食い違っていても、現地の食習慣は尊重すべきだと説いている。
ラファ・ベニーテス監督から招待を受け、チームと同じ食堂で朝食をともにしたのだが、そこではスティーヴン・ジェラード、ディートマー・ハマン、サミ・ヒューピアらが楽しそうに卵料理とベーコン、ソーセージを思う存分食べ、がぶがぶとミルク入りのコーヒーを飲んでいた。 練習開始まで1時間を切っていたのにだ。 だが、それが選手の体に害を与えているとは一概には言えない。 その2週間後、ミランを相手にした決勝戦がどのような結果になったかは、誰もが覚えている。 そういえばイングランドでは、ホームゲームでは試合前に直接スタジアムに集合するという習慣がある。 試合を控えてチーム全員で指定通りの食事をしないというのは、栄養学的に見るとマイナスなのかもしれないが、試合直前まで自宅で過ごせるというのは、精神面ではプラスだろう。 果たして、どちらの手法がゲームに良い結果をもたらすのだろう?

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