本誌記事 WebCALCiO 2002

今回、ドナドーニは、これまでにあまり出番がなかった選手や代表経験のない若手にもチャンスを与えた。チャンスを最大限に生かしたのは、ブッフォンの故障で先発出場の機会が回ってきたマルコ・アメーリアである。彼は、与えられた役割を100パーセント果たした。90分間をノーミスで通し、「世界中を見渡しても、これほど優秀なセカンドGKを有している国はない」と思わせるような見事なパフォーマンスを示したのである。ドナドーニにとって、このテストマッチの最大の収穫は、アメーリアが使えるという確信を得たことだろう。いや、単に「使える」というだけでない。世界一のGKと言われるブッフォンが仮に故障で出られなくなっても、「EURO2008はアメーリアで何とかなる」という確信を持つに至っているはずだ。

若手の中で最も目立ったのがパッラディーノである。彼はそのテクニックを遺憾なく発揮した。個人技でサイドを突破した後、自ら強烈なシュートを見舞ったシーンは彼の高い潜在能力が発揮された場面だった。シュートはファーサイドのポストを叩く形となったが、誰もが彼の才能を改めて感じたはずである。A代表でも十分に通用することが証明されたのだ。後半26分にはマルコ・ボリエッロが代表デビューを果たした。相手DFを引きつけてトーニにスペースを作る動きにドナドーニ監督も合格点を与えたに違いない。

78分に交代出場したクアリアレッラが、ファーストタッチでダメ押しとなる3得点目をポルトガルのゴールに突き刺した

ポジション争いはチームのレベルアップにつながる。後半の途中、パッラディーノに代わって入ったファビオ・クアリアレッラは、最初のボールタッチでダメ押しとも言える3点目をゲット。熾烈なポジション争いの中で、チーム全体に良い意味での“傲慢さ”が生まれてきている。W杯を制したチームの中でポジションを獲得したことへの自信が、大きなプレーの呼び水になっているのだろう。

アッズーリの攻撃陣は思う存分躍動した。この日起用された5人のFWの全員が、ドナドーニの期待に応えるパフォーマンスを披露したのである。今回は招集から外れたクリスティアーノ・ルカレッリ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、アントニオ・カッサーノなどを含め、本大会出場の23人の枠を巡る競争は熾烈なものになるだろう。

その枠を虎視眈々と狙っているのがジュゼッペ・ロッシだ。 昨シーズン後半、ゴールを量産してパルマのセリエA残留に寄与したロッシは、今シーズン、リーガ・エスパニョーラのビジャレアルでゴールを積み上げている(16試合で10ゴール)。
現在、リーガ・エスパニョーラのビジャレアルで好調を維持するロッシは、確実視されている北京オリンピック出場だけではなく、EURO2008本大会出場メンバー入りも狙っている
ロッシが今の調子をシーズン終了までキープできれば、ドナドーニも無視できなくなるはず。 すでに8月の北京オリンピックへの参加が確実なロッシだが、6月のEURO2008でもプレーする可能があるのだ。 「EURO2008とオリンピックの両方に参加することでバカンスがなくなっても全然構わない。 もし、そうなったら、僕がサンタクロースにお願いしたことが実現したということさ」と言うロッシ。 ドナドーニのアッズーリにとって残されたテストマッチはあと1つ。 3月26日にエルチェ(南スペイン)で行われるスペインとの親善試合である。 おそらく、ドナドーニはスペインでのゲームで“リーガのストライカー”を試すつもりだろうが、果たしてロッシがどんな形で監督の期待に応えるのか注目したい。

また、スイス・オーストリアという開催地がイタリアに有利であるということがポルトガル戦で証明された。この日、スタンドは3万人以上のファンで埋まった。単なる親善試合だというのに、スイスに住む数多くのイタリア人がアッズーリの応援に駆けつけたのである。スタンドはアッズーリへの応援一色。スイスはイタリア人移民が多い国である。EURO2008の本番でも、イタリアへの盛大な声援が巻き起こるはずだ。

さて、本番まで残された時間はわずか。3月に予定されているスペインとの親善試合の後は、本大会開幕直前に数試合、最終調整のためのゲームがあるだけ。ポルトガルとの親善試合での圧勝を目にしたファンの間には、いつになく楽観的な雰囲気が生まれている。ビッグイベントを前にして、アッズーリの評価がこれほどまでに高いことはいまだかつてなかった。イタリアがビッグイベントを制した時、例えば、1982年のW杯スペイン大会、2年前のドイツW杯、アッズーリは批判を糧にして育っていったものだ。大会を通じて徐々に強くなる、というのがアッズーリの定石。ある意味、我々はこの手の楽観ムードには慣れていないのだ。だが、ここはひとまず、ドナドーニの言葉を信じようではないか。「6月にはさらに良いチームができ上がっているはずだ」というドナドーニの言葉を信じて、淡い夢を見続けるのも悪くない。

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