本物のストライカーとして
ゴールを求められるデル・ピエロ

今シーズンのユーヴェの浮沈のカギを握るのは2人。1人は監督のリッピである。問題は、リッピが今まで頭の中で描いてきたユーヴェに関する固定概念を一掃し、全く新しいチームを、新しいスタイルを作るという意識を持つことができるかということだ。

ユーヴェは昨シーズンも、(好不調に波があった)ファン・デル・サールを除けば、リーグ最高の守備力を誇っていた。そこに世界最高のDFテュラムが加わったのだから、理論上は最強のDF陣となった。だが、DF陣の強化と反比例したのが攻撃陣である。ユーヴェの得点能力は昨シーズンもローマ、ラツィオにははるかに劣っていた。その弱体攻撃陣からチーム得点王のピッポ・インザーギが抜けたのだ。インザーギは毎シーズン、必ず15ゴール以上は記録できるストライカーである。インザーギの穴をコヴァチェヴィッチないしはアモルーゾで埋めるなんて期待するのはいささか無理な話(その後、コヴァチェヴィッチはラツィオのサラスとトレードされる)。そもそもクリスティアン・ヴィエリがユーヴェ入りするという条件の下でインザーギ放出案は生まれたものなのだから、明らかにユーヴェ・フロントの勇み足であった。ヴィエリ本人との合意はできていたが、最終的にはモラッティ会長(インテル)がユーヴェの目論見を台無しにしたという次第である。ユーヴェ・フロントの詰めの甘さが“決定力を欠くユーヴェ”という最悪のシナリオを作る可能性は高い。

少なくともシーズン当初は、昨シーズンまでのダーヴィッツ&ジダンというコンビは完全に消滅。ゲームの中枢部はタッキナルディ&マレスカorオニールという未知数のコンビで形成されることになる。左サイドにネドヴェド、右サイドにザンブロッタないしはクリスティアン・ゼノーニと、サイドラインは一段と強化された。だが、センターラインの弱体化は否めない。昨シーズンまでのユーヴェは、中盤でダーヴィッツが激しいプレッシングで相手のボールを奪い、ジダンとの息の合ったコンビネーションで攻撃を作りあげていた。ジダンはその巧みなボールコントロールからスルーパスを出したり、自らシュートを打っていた。要するにセンターラインが攻守の要になっていたのだ。2人がいなくなった今(ダーヴィッツはやがて復帰するが)、ユーヴェはサイドからの崩しを重視するはず。そこまではフロントも考えていた。だが、サイドから上がったクロスに対応するのがヴィエリとトレゼゲの2トップというのがフロントの思惑だったのだ。今のユーヴェにはトレゼゲ1人がハイクロスに対応するしか方法はないのである。

ユーヴェ浮沈のカギを握るもう1人はデル・ピエロ。今シーズンのデル・ピエロには本物のストライカーとしてゴールを量産することが求められている。ヴィエリ獲得に失敗し、インザーギを放出したユーヴェでは、デル・ピエロにゴールが求められているのだ。もしヴィエリがユーヴェ入りしていたなら、リッピはおそらくデル・ピエロを2トップの背後に据えることができただろう。かつて、トラパットーニがヴィアッリとラヴァネッリの2トップの背後にロベルト・バッジョを据えたようなフォーメーションでゲームに臨めたはずである。そうすることで、ジダンの抜けた穴を最小限に防げたはずだった。しかし、現有勢力ではデル・ピエロをセカンドアタッカーとして使うしか手はない。ということは、トレクアルティスタ(トップ下)のポジションに入る選手、要するにファンタジーアを持ったMFがいなくなるということなのだ。その役割をネドヴェドに期待するのは酷である。ネドヴェドの突破力には目を見張るものがあるし、シュート力にも定評がある。だが、彼には攻撃を組み立てるという意思はないようだ。パスをフィードするというより、パスをもらって自分で決めるといったタイプのMFなのだ。意表を突いた鋭いシュートこそ彼の持ち味なのだ。

今シーズンのデル・ピエロは「好プレーをした」だけでは喜んではいられない。モンテッラやインザーギのように、どんな形からでもゴールに持っていくという貪欲さが求められているのだ。スクデット候補と呼ばれるチームはそれぞれ強力な2トップを擁している。バティストゥータ&モンテッラ、ヴィエリ&ロナウド、クレスポ&ロペス、ミロシェヴィッチ&ディ・ヴァイオなどである。破壊力という観点から順位をつけるとしたら、デル・ピエロ&トレゼゲの2トップは何位に入るのだろうか?

ユーヴェの攻撃力には物足りなさを感じる。だが、最も得点力があるチームがスクデットを勝ち獲るという法則があるわけではない。時として、最も失点の少ないチームがスクデットを獲得することもあるのがカルチョの世界である。そういえば、攻撃的サッカーを売り物にしていたサッキのミランにしても、ゴール数では2位のナポリに劣っていたが、総失点14という驚異の守備力でスクデットを獲得した(87−88シーズン)こともあるのである。

名実ともにユーヴェのチームリーダーとなったデル・ピエロ。ジダン、インザーギが抜けた今、プレーはもちろん、精神的支柱としても、チームを引っ張っていかなければならない。 昨シーズンは、ジダンとのフレンチ・ホットラインでゴールを量産したトレゼゲ。インザーギが抜けた今シーズンは、正真正銘のエースストライカーとして期待がかかる。 昨シーズンは、セットプレーでのヘディングで何度もチームを救ったトゥドール。テュラムの加入でDFのスタメン争いは激しくなるが、強力なヘディングがある限りポジションは安泰だ。 ヴィエリの獲得以外は、望みどおりのメンバーをそろえることに成功したリッピ。新しいユヴェントスを作り上げるためには、これまでの固定観念を一掃することが必要だ。

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