文●アダルベルト・ボルトロッティ
text by Adalberto BORTOLOTTI
写真●兼子愼一郎、グエリン・スポルティーヴォ
photo by Shin-ichiro KANEKO/GUERIN SPORTIVO
相手DFを恐怖に陥れる
新生ミランの攻撃力

ミランが今シーズンのスクデットの本命であることに異議を唱える人はいないだろう。まず、ミランの2トップの破壊力に匹敵するだけの攻撃力を持ったチームはローマ以外には考えられないからだ。シェフチェンコ&ピッポ・インザーギの2トップは、その実績を考慮すればセリエAナンバーワンの折り紙付きである。ミランの破壊力はそれだけでは終わらない。脅威の2トップの背後には、正確なスルーパスとファンタジスタとして特級のシュート力を持ったルイ・コスタがいるのである。セカンドアタッカー的色彩が強くなったトッティにも劣らないだけの、得点能力を持ったトレクアルティスタが控えるというのも、相手DFにとっては脅威であろう。

昨シーズン、大きな欠陥としてザッケローニの足を引っ張ったMF陣が質量ともに充実したことも大きなプラス要素である。昨シーズンは、故障者の続出から大事な試合でパブロ・ガルシーアとカラーゼを中盤の底に据えるという“軟弱な”スタイルでしかゲームを組めなかった。だが、その中盤はいまや、ミランの売り物と言えるほどに充実している。昨シーズン、“道に迷っていた”アルベルティーニ、アンブロジーニ、ガットゥーゾは本来の姿を取り戻しつつあるし、ミステリアスな男、レドンドもどうやら1年遅れのデビューを果たしそうな気配。さらに、アタランタから加入のドナーティはミラン中盤の貴重な控え要員として選手層に厚みを加えている。サイドアタック、およびサイドの守備に関してミランはセリエA最強のチームとなった。右サイドにコントラ、ヘルヴェグ、左サイドにココ、セルジーニョと、サイドバックに高レベルの選択肢を持っている。本来、サイドからの展開はテリムが最も好むサッカースタイルである。テリムが誰を選んだとしても、ミラニスタにとっては最高の結果が保証されているといったところか。

しかし、同時に欠陥と言える要素もある。シェフチェンコとインザーギが同タイプのFWであるということ。2トップは、エリア中央で構えるセンターフォワードとサイドに開いてスペースを作るセカンドアタッカーで構成するのが普通である。ところが、シェフチェンコにしてもインザーギにしても中央で構えるタイプのFW、すなわち典型的なセンターフォワードなのだ。シェフチェンコは時には引き気味にプレーすることはあるが、これはあくまでトップスピードでエリアに入っていくための予備行為にすぎない。インザーギは御存じのとおり、オフサイドラインぎりぎりにポジションを取り、裏へのスルーパスに反応するタイプのFWで、基本的に2人とも同じプレーゾーンを動くはずである。それだけではない。2人とも、“素晴らしきエゴイスト”なのである。ともかく自分がゴールを決めることに酔いしれる傾向が強いFWなのだ。この2人の間で、“絶妙なパス交換”など期待するほうが間違っている。それぞれのこれまでのゴール数を計算すれば自ずと「ミランの攻撃力はアップした」ということになるのだが、それはあくまで机上の計算。テリムは、「シェフチェンコかインザーギか」という選択を迫られる可能性もある。

ミランの中盤は充実したが、脆さを露呈したDFラインは安定性を取り戻せるのだろうか?DFの安定こそ多くのミラニスタが抱く疑惑の1つである。テリムは4バックの中央にはカラーゼとマルディーニを据えると予想される。カラーゼはいわゆるオールラウンドプレーヤー。どのポジションも無難にこなすという意味では貴重な存在である。ただ、マルディーニはイタリアサッカーが生み出したDFの“怪物”、特に左サイドでのプレーではファッケッティ、カブリーニを越えたと言っても差し支えないプレーヤーである。だが、問題はともにセンターバックのスペシャリストではないという点にある。センターバックのスペシャリストと言えば、ミランではすぐにコスタクルタの名前が挙げられる。コスタクルタなら状況に応じて完璧に仕事を(ファウルも含み)こなすはずである。だが、その年齢を考えた場合、テリムが果たして何回彼をピッチに送り出すのか……。
シェフチェンコと同じくスピードが持ち味だが、インザーギのスピードは一瞬でDFの裏をとるスピードのこと。インザーギにとってはオフサイドの数が多ければ多いほど調子がいい証拠だ インザーギ、シェフチェンコと、持ち味のスルーパスを活かすには最高の2トップが揃った。あとは、フィオレンティーナにはなかった、ビッグクラブ独特のプレッシャーに慣れるだけだ ルイ・コスタという、最高のパートナーを得たシェフチェンコ。クレスポに奪われたが得点王のタイトルを取り戻したいところだが、本当のライバルはチームの中にいるのかもしれない 大規模な補強で豪華な攻撃陣に目がいきがちだが、昨シーズンのミランの本当の問題はDF陣の崩壊だった。スクデット獲得のためにはマルディーニを中心としたDFの立て直しが必要だ

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