文●アドリアーノ・ジョルジ text by Adriano Giorgi
写真●兼子愼一郎 photo by Shin-ichiro KANEKO

もう言い訳は許されない。希望どおりの布陣が叶えられた今シーズン、 カペッロに許されるのはスクデット獲得のみ
今やバロン・ドールを真っ向から狙えるほどの
プレーヤーに成長したトッティ

ローマは、開幕ダッシュに失敗するわけにはいかなかった。長すぎたオフシーズンは、トリゴリアの空に暗雲を運んでいた。まず、チームの“頭脳”として機能するはずだったエメルソンが故障して長期戦線離脱。その代役になるはずだったディ・フランチェスコも後を追うように病院行きとなった。さらに、セリエA開幕前の“前哨戦”とも言えるコッパイタリア3回戦で、アタランタの前に屈服。今でこそ、アタランタの実力は誰もが認めるところだが、その頃はセリエBから昇格したばかりの“小者”と考えられていたチームに敗れ去ったのだから、ティフォージが激怒するのも当然であった。一部サポーターは常軌を逸し、カフーとアスンソンを人種差別扱いして中傷するなどの暴挙に出た。

ところが、いざ開幕してみると、ローマがトップグループをリードすることになり、チーム周辺に立ちこめていた重い空気は一掃された。懸念されていたバティストゥータの膝は、思いのほか早期に回復し、トッティのカリスマ性がチームをさらに上昇機運に乗せた。なにより特筆すべきは、未完の大器と言われ続けていた “ローマ”がとうとう成熟期に達したと言えることだ。序盤戦は、他の“ビッグ7”と比べるとプロヴィンチャとの対戦が多く、“カード運”に恵まれていたことは確かである。しかし、昨シーズンまでのローマは、そのプロヴィンチャ相手にホームで星を落として墓穴を掘っていたのである。だが、今シーズンは違う。勝てる相手から確実に勝ち点を積み重ねているのだ。

とは言うものの、ローマの「楽勝」と言える試合はひとつもない。結果的には4−0の大差になったレッチェ戦ですら、苦しんだ末の勝利であった。どちらかと言えば、カペッロが顔をしかめるような内容だった試合のほうが多い。だが、勝ち星だけはコンスタントに積み重ねられ、好調は持続している。この“変身”の理由 として、バティストゥータ、サムエルらの獲得を挙げないわけにはいくまい。特に、ゲーム内容が悪く、沈滞した空気の中でも一発でゲームを決める能力があるバティストゥータの加入が持つ意味は計り知れない。また、ゼビナ、ギグーなど実力派も手に入れたカペッロ監督は、ようやく充実した選手層を操れることになった。今シーズンのローマは、ポジションごとにレギュラークラスを2人揃えている。トッテイ、バティストゥータの控えとなるナカタ、モンテッラのようなスター選手も、移籍を希望する噂こそ絶えなかったものの、最終的にはローマ残留を選んだ(とりあえず、来年1月までは)。彼らが、扱いを不服として“危険分子”になる可能性はあったが、カペッロは適度に出場機会を与えて活躍の場を与えたため、今のところは爆発せずに済んでいる。

特に、外国籍選手の問題から、ベンチにすら入れない試合が続いたナカタが、ようやく出場した試合で、以前どおりのプレーを見せたことは、カペッロにとって、嬉しい“誤算”と言っていいほどの“朗報”であった。だが、いかにナカタが素晴らしいプレーをしようと、ローマにとってトッティは動かしようのない存在である。特に、今シーズンは例年に増してゴール嗅覚が冴えわたっている。ローマのキャプテンのスーパープレーが、チームの快進撃を支えていると言っても過言ではなかろう。開幕戦のような難しい試合で、ムードをチームに呼びこむ先制点を挙げ、ゴール裏から飛び始めていたブーイングを拍手に変えるキーマンとなったのも彼である。フランチェスコは、欠点だったムラの多さを克服し、名実ともに本物のキャプテンとなったのだ。EURO2000を転機に世界的名声を得た彼は、レフェリーからも一目置かれるような存在となり、昨シーズンほど不必要な笛を吹かれなくなった。今やバロン・ドールを真っ向から狙えるほどのプレーヤーに成長したのである。

ローマのスターから、 イタリア中のスターへと ステップアップしたトッティ。 しかし、まだ成長過程である
1 / 3