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 2004.03.24
「ローマファンの少年が警察の車にハネられて死んだ」という噂が出回り、両チームのサポーターが試合中止を要求したローマ・ダービー。後でこの情報は完全なデマということが判明したが、後半2分、複数の発炎筒がピッチに投げ込まれたためプレーが中断された際に、3人のロマニスタがピッチに乱入し、トッティをピッチサイドに呼んで“事情”を告げた。近くにいたテレビカメラが下記の会話を収録していた
サポーター1
「少年が殺されたんだよ。警察の車にひかれたんだ」

警備員
「そんなの、デタラメだ。嘘っぱちだよ」

サポーター1
「今、場内アナウンスでも言ってたじゃないか」

警備員
「逆だよ、君。(少年が死んだという)情報は『真実ではない』って言ってたじゃないか」

サポーター1
「フランチェスコ(トッティ)、少年がぶっ殺されたんだよ」

トッティ
「今、確認してもらってるところだ。確かな情報なのか?」

サポーター1
「確かだよ。試合を中止しないとダメだよ。このまんま続けるわけにはいかないだろ」

トッティ
「当たり前じゃないか。本当にそんなことが起きたんだったら、中止にするに決まってるじゃないか」

警備員
「いや、すべてデタラメですよ」

トッティ
「今、本当かどうか確認してもらってるんだ」

サポーター2
「フランチェスコ、(死んだ)少年の両親からさっき、電話があったんだ。本当なんだよ」

サポーター3
「フランチェスコ、(試合を中止にさせるようにすると)約束してくれ」

トッティ
「わかった。約束するよ」

サポーター1
「お願いだから、試合を中止にするようにしてくれ。頼んだぞ」

その直後、トッティはロゼッティ主審にサポーターから聞いた話を伝えた。そして、「ゲームを続行しろ」と言うカペッロ監督に、こう答えた
「ミステル、続けるのは無茶ですよ。ここでプレーを再開したら、あいつらにぶっ殺されますよ」

ラツィオのDFマッシモ・オッドはこうコメント
「何が起きたのか、さっぱりわからなかったんだ。そうこうしているうちに、トッティが寄ってきて、『サポーターが、少年が殺されたと言ってる』って知らせてくれたんだ。みんなで顔を見合わせて、そういう状況では誰もプレーできるわけない、と言い合ったのさ」

同じくラツィオのDFシニシャ・ミハイロヴィッチは
「殺気立った雰囲気だったね。あの状況で試合を続行してたら、『両チームのサポーターが乱入して、とんでもない事態になってしまう』という意見もあったんでね。とてもじゃないけど、続けられる雰囲気じゃなかったよ。ロゼッティ主審は最初、続行させるつもりだったみたいだけどね。続行させてみて、観客がどうリアクションするか様子を見たかったんだろうね。でも、オレたちはもう、やる気をなくしてたんだ」

実際、試合中止を命じたアドリアーノ・ガッリアーニ、レーガ・カルチョ会長
「私は電話でファビオ・カペッロさんと話しました。彼は『あの状況でプレーを続行するのは、選手陣とコーチ陣、審判、そして観客の身を危険にさらすことになる』と言いました。警察が、幸いにも少年が死んだなんてデタラメだ、と場内アナウンスを通して明言していたにもかかわらず、一部のサポーターは(プレーが続行したら)ピッチに乱入して手当たり次第に選手を殴り、すべてに放火して破壊する、などと脅したそうなのです。カペッロさんの後、両チームのフロントとも話をしましたが、みんな同じようなことを言ってました。選手陣はサポーターに脅された様子で、何はともあれプレーを続けられる雰囲気ではない、と。その時点でロゼッティ主審に代わってもらい、試合中止を実行するように伝えたのです」

一方、ローマの県知事、アキッレ・セッラ氏は、ガッリアーニの決断を非難した
「私とローマ警察署長のニコーラ・カヴァリエーレ氏は、試合を続行させるのが、観客の安全のために唯一正しい選択だと判断しました。事実上、少年の死亡なんてなかったわけですから、試合を中断させる前提は存在しなかったわけです。ところが、ガッリアーニ氏が直接ロゼッティ主審と電話で話して、我々の意見を無視して試合中止を命じたわけです」

この事件は、スポーツ界はともかく、イタリアの政治界で大きな反響を呼んだ。労働・社会政策相のロベルト・マローニ氏は、オリンピコの出来事はローマとラツィオの過激派サポーターが組んで、計画的に行ったことと指摘した
「財政危機に陥ったクラブを救う法案が国会で議論されている中、政府に圧力をかけるために両側のサポーターが裏で合意し、事態を仕掛けたのではないだろうか」

一方、クルヴァの一部の動きを近くから知る者は、こうコメント
「今やクルヴァの大半を牛耳ってる“あいつら”、サッカーファンじゃないんだよ。常に暴力を振るうための因縁を探してるチンピラさ。極右翼のグループとかも入り込んでるんだ。で、イタリアだけじゃなくて世界中の注目が集まるローマ・ダービーで、どれだけ自分たちが強いか、どこまで強引に社会を歪ませることができるか、見せつけたかったわけなのさ。天下のトッティでさえも自由自在にコントロールできるってことを、『オレたちの言いなりなんだ』ってことを示したかったんだね。『子供が殺された』という情報を出回らせて、観客を動揺させて。で、警察と政府に対する不信感を沸き立たせて。人の感情をうまく利用する、恐るべきテロだよ、まったく」
(アルベルト・Mさん、44歳、自営業。ロマニスタ暦38年)

ローマ在住・高橋 在